「東アジア流行文化共同体」の興隆に期待したい
漢字文化圏の歴史
いうまでもなく日本列島・中国大陸・朝鮮半島には、歴史的にきわめて深い文化関係がある。 弥生、古墳時代の日本文化の多くは朝鮮半島からの渡来人によってもたらされており、そのもとに中国大陸の先進文明があったことは明らかだ。また7、8世紀における日本の古代王権確立期には、中国からの「文字=漢字」と、インドから唐(中国)を経由しての「宗教=仏教」が入り込んで、日本の文化的骨格を形成した。西洋が視野に入るまえ、日本には日中韓の三国的世界観が一般的であった。 文化における文字の力は強いので、この三国を「漢字文化圏」として一体視する考え方は、世界的にも一般性をもつ。しかし今は、ハングルの使用によって韓国が漢字から離れている。中国文化からの独立意識すなわち文化ナショナリズムが日本以上に強いからだろうが、とはいえ、固有名詞など、漢字で表記する文化が完全に失われたわけではない。 アルファベットに比べ、漢字は圧倒的に難しい。日本でも戦後「当用漢字」というかたちで難しい字が制限されたが、識字率の普及にとって漢字の簡略化は必要だと思われる。そして中国という本家が簡略化してくれたのだから、日韓もこれを利用することを考えてもいいのではないか。 日本語の熟語(音読みの場合)はもともと漢語であるから、発音を調整すれば、かなり意味が通じるようになる。現在の中国語の発音は他国の人にはきわめて難しいので、ここは中国に譲ってもらって、日中韓が共通で使える簡易な発音を開発するべきだ。日中韓が協力して、漢字をもとにした共通語を普及させれば、英語圏やスペイン語圏やアラビア語圏に準ずる、大きな言語文化圏が成立することになる。 東アジア流行文化共同体を考えることは、地域的には、漢字文化圏復興の意味をもつのだが、内容的には、この「流行文化=ポップ・カルチャー」にアメリカ文化の影響が強く、加えてヨーロッパ文化の影響もあるということが重要である。