「いつ自分が被害者になるかはわからない」カスハラで苦しむ社員に産業医が教えている"身を守るための行動"
カスハラの被害を受けたらどうすればいいのか。大手外資系企業を中心に年間1000件以上の相談を行っている産業医の武神健之さんは「一人で抱え込まずに話せる仲間がいるだけでも気持ちは楽になる。そして、2つのことをしてほしい」という――。 【この記事の画像を見る】 ■クレーマーの登場で仕事に強いストレスを感じるように こんにちは。産業医の武神です。最近、ニュースでカスタマーハラスメント(カスハラ)という言葉をよく見聞きするようになりましたが、私の産業医面談の中でも、その相談が増えてきました。そこで今日は私が産業医面談で経験したカスハラ事例とその対策について述べたいと思います。 Aさんは、「最近、元気がなさそう」と人事からの紹介で産業医面談に来た30代の女性でした。 聞いてみると、彼女は会社のカスタマーセンターで働いていますが、最近朝会社にいくのが辛い、帰宅後も仕事のことがなかなか頭から離れない、夜寝る時間になっても「寝てしまうとまた朝が来て会社がある」と思うとベッドに入ること自体が怖い等々の症状がありました。 症状の原因には、Aさん自身も心当たりがありました。彼女はここ数年コールセンターを担当しているのですが、今まではその仕事自体にストレスはなかったようです。しかしこの数カ月間、お客さんで一人、かなりの厄介者(クレーマー)がおり、その人とのやり取りが始まってから、他のコールまで辛くなってきたとのことでした。 ■カスタマーコール担当者が自分ひとりになってしまった 辛いながらも、カスタマーコール担当の同僚がもう一人いたときには、二人で愚痴ったりお互いの気持ちを共有できたりしてまだよかったようですが、その同僚は2カ月前に他部署に異動になりました。それ以来、カスタマーコール担当が自分だけになってしまい、オンとオフのメリハリや気分転換を心がけているものの、上記の症状が出てきたとのことでした。 Aさんはストレス症状があり、自分なりの対処をしているにもかかわらず、次第に悪化してきてしまっている状態でした。他の部署に異動できない限りストレス原因がなくなる可能性は低く、医療受診を勧めた方がいい状態であることは明らかでした。 私は、カスタマーハラスメントに対して、このように個人としての対処が難しくなってきたときには、医療受診を勧めると同時に会社としての対処が可能かを確認します。