スマホが使えなくなる!? 2024年に起こりうる「宇宙天気災害」とは #災害に備える
大規模なフレアによる日常の影響と対策
国は2022年、100年に一度の規模のフレアが発生した場合にどのようなことが起きるのかを検討。同年6月、「最悪のシナリオ」を想定した報告書を発表した。
報告書では、「スマホやテレビ、ラジオが2週間断続的に使えなくなる」「タクシーや列車の無線で2週間断続的に通信障害が発生し、公共サービスの利用が困難になる」などが示された。通信、衛星、航空、電力と広範囲に被害を受けるという内容だ。 だが、対策ができないわけではない。柴田さんは、太陽フレアによって発生する物質・現象には種類があり、地球に届くのは段階的であると語る。 「太陽フレアから放射されるX線は地球に8分で届き、通信障害をもたらすため、すぐに情報発信・対策をしなければいけません。高エネルギー粒子(プロトン現象)は地球に届くまで30分から数日かかりますが、宇宙飛行士は30分以内に核シェルターなどに避難する必要があります。フレア発生から地磁気擾乱(磁気嵐)により多くのインフラが影響を受けるまでには、2、3日程度かかります。そのため、大規模なフレアが発生しても日々情報を追っていれば、対策する時間はあります」 柴田さんが1994年、太陽観測衛星のデータからフレア発生を察知して全世界にメールを発信したところ、2日後に磁気嵐が発生。それによってシカゴの電力会社は変圧器が壊れるリスクを未然に防ぐことができた。「電力会社の変圧器が壊れていたら、1989年のケベックの大停電のような事態にもなりかねなかった」と当時を振り返る。
「危ないとわかったら計画停電や計画運休などをして、最悪の被害が出ない選択をするのが重要だということです。一市民においても、フレアのリスクが高い数日間は外に出ないなど、柔軟に予定を見直すことが大切です。それから、宇宙天気による災害は、地震や落雷による停電など、他の災害対策と重なる部分も多い。携帯電話の代替として複数の連絡手段を確保したり、停電や物流の停滞に備えて蓄電器や非常食・水を用意したりしておく。コンピューターなど機器のプラグをコンセントから抜いておけばハードが壊れるリスクも軽減できます。一方で地震などと異なるのは、被害範囲が全国に及び他所からの支援を得られない恐れがあること。そのため、各自の備えがより重要となります」 「東日本大震災は1000年に一度といわれる災害でした。1000年に一度というのは1000年後に起こるという意味ではなく、10年後に起こることもある」と柴田さん。 東日本大震災が起こる以前、今のように津波や原子力発電所に対する危機意識を持っていた人はどれだけいたか。宇宙天気災害が起こりうることを前提とした対策を急ぐことが、過去の教訓を活かすことになる。