もういつ噴火が起こっても全然不思議ではない――研究の第一人者に聞く、「富士山リスク」への向き合い方 #災害に備える
静岡県と山梨県にまたがってそびえ立つ日本最高峰の山、富士山。その美しい円錐形の山容は多くの人を魅了し、芸術の分野などにも大きな影響を与えてきた。しかし、富士山には「もう一つの顔」がある。過去に何度も噴火を繰り返し、人々に恐れられた火山としての顔だ。3月末公表の「富士山火山避難基本計画」の策定に尽力した火山噴火予知連絡会の元会長で、現在は山梨県富士山科学研究所の藤井敏嗣所長に、富士山噴火の可能性や想定される被害について話を聞いた。(聞き手:飯田和樹/撮影:殿村誠士/構成:安藤智彦/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
300年前で全て終わってしまったと考えることはできない
富士山が最後に噴火したのは、江戸時代の1707年のこと。富士山の南東斜面に新たな火口を開けた「宝永噴火」と呼ばれるこの有名な噴火は、山麓の村々はもちろんのこと、当時の江戸にまで火山灰を降らせた激しいものだった。しかし、これ以降、現在に至るまで富士山は表向き静穏な状態を保ち続けている。 ―― 300年以上も噴火を起こしていないので、富士山が活火山であるというイメージを持つのはなかなか難しいかもしれません。 「この300年というのは、富士山にとっては非常に特殊な状況です。5600年前ぐらいまでさかのぼって調べてみたところ、平均すると30年に1回ぐらいのペースで富士山は噴火しているんです。では、なぜ今、300年以上という期間が空いているのか。それがよくわからない。ともかく今までの富士山の歴史の中では、非常に長い期間休んでいる状態なんですね」 ―― そう考えると、もういつ噴火が起こっても全然不思議ではない。 「それがわれわれの理解です。全く死に絶えた火山ならば、300年前の噴火を最後にもう何もないという可能性もゼロではない。しかし、2000年から2001年にかけて、富士山の下で深部低周波地震と呼ばれる地震が頻発したことがある。この地震は、富士山の下でマグマかマグマから分離した水蒸気みたいなものが動いているときに起きると考えられます。つまり、富士山の深いところにマグマが存在している。ですから、300年前で全て終わったと考えることはできないわけです」