「完璧な備えはないと実感した」井上晴美さんが熊本地震の経験を振り返って学んだこと 防災専門家が解説 #災害に備える
最近、日本各地で震度5以上の地震がたびたび発生している。いつどこで巨大地震が起きてもおかしくないという状況で、特に幼い子どもを抱えて避難する場合、どういった備えをしておけば安心なのだろうか。2016年4月に発生した熊本地震で自宅が全壊するなど大きな被害に遭った、女優・タレントの井上晴美さんは、被災当時、夫と3人の子どもとともに避難生活を送ったが、避難所は利用しなかったという。井上さんの被災体験を通して、学ぶべき適切な備えや避難方法とはどのようなものか。防災の専門家である東北大学災害科学国際研究所の佐藤翔輔准教授に聞いた。(Yahoo!ニュース Voice)
井上さんが語る「地震直後の状況」:部屋が崩れて防災グッズが取り出せなかった
――熊本地震でご自宅が全壊されたそうですが、改めて当時の状況を教えてください。 井上晴美: 前震が起きた14日の21時半頃は、私は台所で片付けを、夫は自分の部屋で仕事をしていて、子どもたちは3人とも眠っていました。揺れが大きく、電気も消えて、何が起きたか一瞬わからなかったですね。冷蔵庫が倒れてきて私が台所に閉じ込められてしまったのですが、その間に夫は子どもたちの寝室に行ってくれていました。 当時子どもたちは4歳、6歳、8歳で、自分で何か準備ができるわけでもなかったので、夫がすぐにたたき起こして安全なスペースに移動させました。揺れがおさまってから、とにかく一度外に出ようと、持てるだけの荷物を持って家を出たんです。 ――被災された時のお子さんたちの様子はいかがでしたか。 井上晴美: 子どもたちは3人とも、前震や本震といった大きな地震の時は寝ていて、揺れていた瞬間の記憶はないんですよね。地震によるトラウマはないものの、実感がわかず、最初はあまり状況がつかめていなかったと思います。 ただ、町には普段見かけない救助の車両や人がたくさん行き交っていたので、落ち着かなかったみたいで。うちの長男は「科学漫画サバイバルシリーズ」の本がすごく好きなんですが、「家に取りに行きたいな」ってボソッと言った時は心が痛みましたね。日常生活の何もかもを失った時に、子どもたちにとって一番ショックだったのは、本やおもちゃがなくなったことなんだなって思いました。 ――井上さんは被災される前から、万が一に備えて食料などを備蓄されていたそうですが、そういった食料も避難生活で活用されたのでしょうか。 井上晴美: 災害時に備えて非常食や防災グッズを置いておいたお部屋があるんですけど、ちょうどそのお部屋から崩れてしまったので、それらの一切を窓から取り出すことができなくなったんですね。いつどこで災害に遭うかわからないため車の中にも、水や非常食、子どもたちの着替えを3日分ぐらいは常に入れていたので数日は持ちましたが、東西南北どの角度に崩れても取り出せるよう、家の中でも分散させておかなければいけないなと学びました。