なんと「減量」どころか、「老化による体力低下」まで防ぐ…運動生理学で露わになった月イチ軽め登山「驚愕の運動効果」
登山人口は年々増加の一途をたどり、いまや登山は老若男女を問わず楽しめる国民的スポーツになっています。いっぽう、登山人口の増加に比例して山岳事故も増えており、安全な登山技術の普及が喫緊の課題となっています。 【画像】じつは、山を登るのは「有酸素運動の最高峰」だった 運動生理学の見地から、安全で楽しい登山を解説した『登山と身体の科学 運動生理学から見た合理的な登山術』(ブルーバックス)から、特におすすめのトピックをご紹介していきます。 健康や体力づくりとして登山をしている方、これからしたいと思っている方は多いと思いますが、今回は「登山における体脂肪の減量効果」を見ていきたいと思います。 *本記事は、『登山と身体の科学 運動生理学から見た合理的な登山術』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。
体脂肪の減量効果
登山は運動強度が適度に高く、運動時間は非常に長い、という特徴を持った有酸素運動です。したがってこれを励行すれば、身体のさまざまな部分によい変化が起こってきます。このことについて、筆者たちの研究で得られた、いくつかのデータを紹介しながら説明していきます。 まず、体脂肪を減量する効果について紹介します。図「ウォーキングと登山による体脂肪の減量効果」は、平地ウォーキングと登山による体脂肪の減量効果を比べた実験です。 3つのグループを作り、やや肥満している中高年男性に10名ずつ参加してもらって、1ヵ月間の取り組みを行いました。A群では食事指導(ダイエット)のみ、B群では食事指導に加えて毎日1時間の平地ウォーキング、C群では食事指導に加えて週末に1回の登山(約5時間)を行いました。 その結果、毎日1時間のウォーキングを30日間続けたB群と、週に1回で月4回の登山をしたC群では、体脂肪率が同じだけ減りました。そして両群とも、肥満領域から抜け出すことができました。反対に、運動をせずダイエットだけをしたA群では、体脂肪率は変化せず、肥満領域からは抜け出せませんでした。 週末に1日だけ時間を作り、5時間程度の登山をすることで、毎日1時間のウォーキングをするのと同じだけ体脂肪を減らせることは、登山の好きな人にとっては嬉しい話です。平日は忙しくて運動ができないと悩んでいる人にとっても、週末に行う登山はうってつけの選択肢だといえるでしょう。 図「ウォーキングと登山による体脂肪の減量効果」は、1ヵ月間という短期間での話でしたが、このような登山を1年以上続けると、さらに多くの効果が現れてきます。次節では、そのような長期的な効果について紹介します。