災害大国の日本 トイレ、キッチン、ベッド――避難所のTKBの改善が命を救う #災害に備える
毎年のように、地震や水害などの大規模な災害が発生する日本。そこで問題になるのが、避難所の環境の悪さだ。長引く避難所生活で体調を崩し、最悪の場合は「災害関連死」として死に至ることもある。その避難所生活で大きな鍵を握るのが、「トイレ・キッチン(食事)・ベッド」の頭文字をとった『TKB』だ。このTKBを改善する取り組みを始めた長野県を取材した。(取材・文/ジャーナリスト・小川匡則/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
台風19号で逃げ込んだ避難所
2019年10月12日、過去最強クラスの台風19号が伊豆半島に上陸し、長野では千曲川が氾濫した。長野市穂保(ほやす)地区では13日に堤防が決壊。周辺の津野、赤沼といった地域を中心に市全体では1541ヘクタールが浸水し、3000戸以上が床上浸水する甚大な被害が出た。 決壊した現場付近では現在も堤防の工事が続く。近隣に住む80代の女性は、12日18時ごろ、夫婦で避難所へ避難したという。 「自宅は畳から1.5メートルの高さまで浸水し、1階にあった物は全部流されてしまいました。ご近所で避難していなかった人たちは、浸水した家屋からヘリコプターで救助されていましたよ」 ヘリで救助されたのは372人にも及んだ。そして、住民の多くが避難所暮らしを強いられることとなった。
赤沼地区に住んでいて、夫と2人の子どもと避難所に入った田中恵子さん(45)は当時の環境を振り返る。 「私たちは10日間くらい親の家に避難していて、そこから避難所に入りました。すごく寒かったのを覚えています」 田中さんが身を寄せた避難所は、千曲川から約4キロ離れた丘の上にある「北部スポーツ・レクリエーションパーク」だった。テニスコート4面が広がる屋内運動場には、赤沼や津野などの地区を中心に最大で300人近くの住民が避難した。 当初は床にビニールシートを敷き、その上でただ雑魚寝をする状態だった。災害発生から3日後、災害用の段ボールベッドが80人分設置された。田中さんが入った頃には段ボールベッドはすでに導入されていたものの、居住環境は厳しかったという。