新型コロナ患者 11週連続で減少の理由 もう感染拡大はしない?…「5類」移行後、1医療機関あたりの患者数は最少
新型コロナウイルス感染症の1医療機関あたりの患者数が減り続けています。感染力は弱くなったといえるのでしょうか。東京医科大学病院渡航者医療センター客員教授の濱田篤郎さんに聞きました。(聞き手・利根川昌紀) 【グラフ】新型コロナウイルスに感染した人の推移
「XEC」とは?
――新型コロナウイルス感染症の直近(11月4~10日)の患者数は1医療機関あたり1.47人で、感染症法上の「5類」に移行してから最も低くなりました。11週連続で減っていますが、なぜですか。 新型コロナが流行し始めてから例年、この時期は感染者が少なくなる傾向にあります。今年は、(1)症状が出ても検査を受ける人が少ない(2)夏に流行して免疫を持っている人が多い(3)気温が下がらない――といったことが影響していると考えられます。 ――気温と感染は、どのように関係しているのですか。 新型コロナに限らず、呼吸器感染症は、冬に患者が増えます。理由として、(1)寒くなると病原体が長生きすることが考えられる(2)人が室内にこもり、換気をあまりしなくなるので、感染が広がりやすくなる――ことが挙げられます。実際に今秋は、まだ寒いという日がそれほど多くありません。 ――感染力が弱くなったとは言えないのでしょうか。 今、欧米などで流行し始めているのは、「XEC」というタイプです。日本でもこのタイプの割合が増えつつあります。「KS1.1」と「KP3.3」という「JN.1系統のオミクロン株」が合わさったもので、従来のものと比べて免疫から逃れやすいのではと考えられています。医学的に、感染力が弱まったとは考えられておらず、むしろ強まっている可能性があります。 ただ、高齢者を除いて、かかっても重症化リスクは低いとされています。ワクチンの効果もあまり弱まってはいません。
米国では「感謝祭」から
――これから増えてくるのでしょうか。 米国では例年、11月下旬の「感謝祭」あたりから感染者が増え始めて、クリスマスの頃にピークを迎えます。日本でも、それより少し遅れて流行すると予想されます。年末にかけては、人々が国内外で移動する機会も増えるため、警戒が必要です。 ――どのような対策を取ればよいでしょうか。 手洗いやアルコール消毒をしっかりし、室内で過ごす場合は、こまめに換気をすることが大切です。マスクは必要に応じて着けてほしいと思います。 症状が出た場合は、自宅で療養します。高齢者は重症化するリスクがあるため、あらかじめワクチンを接種し、症状が出た場合は、医療機関を受診してほしいと思います。
はまだ・あつお
1981年、東京慈恵会医科大卒。同大講師などを経て、2010年7月、東京医科大教授。24年4月から現職。著書に「旅と病の三千年史」(文春新書)、「歴史を変えた『旅』と『病』」(講談社+α文庫)、「職場における感染症対策」(産業医学振興財団)、「海外健康生活Q&A」(経団連出版)、「パンデミックを生き抜く」(朝日新書)など。