サッカー界は新型コロナ禍の経営危機をどう打開するのか…鹿島が10億円弱、浦和が6億円強の巨額赤字
昨春から続く新型コロナウイルス禍が日本サッカー界に刻んできた傷跡の大きさが、クラブ経営における具体的な数字を介してあらためて明らかになった。J1の鹿島アントラーズと浦和レッズの2020年度決算が23日にそれぞれ発表され、当期純損失で鹿島は9億4500万円に、浦和は6億1200万円にのぼる巨額の赤字を計上した。 鹿島はリーグ全体の経営情報が開示されるようになった2005年度以降で7度目の、金額ではこれまでで最大だった2015年度の3億4400万円を大きく上回る赤字となった。鹿島の小泉文明代表取締役社長は、オンライン形式で行われた決算報告説明会で2020年度決算をこう振り返った。 「試合に関連するところ(の収支)については非常に厳しい状況ではありますが、これについてはコロナ禍において、避けられなかったものだと思っています」 売り上げにあたる営業収益は2019年度の67億6800万円から47億9700万円へ、19億7100万円の減収となった。営業収益の二本柱を成すスポンサー収入と入場料収入では、前者は2億4200万円減の20億6100万円、後者は5億2100万円減の4億7500万円をそれぞれ計上した。 さらに2019年度で15億9500万円だった、その他の収入が12億2200万円へと減っている。クラブ創設30周年となる今シーズンのタイトル獲得へ向けて選手の移籍をほぼ封印した影響で、前年度は7億円あまりを計上した移籍金がほとんど発生しなかったと小泉社長は説明する。 支出にあたる営業費用では、最大を占めるチーム人件費を3億8600万円減の25億5000万円に抑えた。全体でも9億2700万円減の57億4600万円に圧縮させたが、減収分の方が大きく上回ってしまった。それでも改善できる余地がまだまだ残されていると言わんばかりに、鹿島の親会社メルカリの取締役Presidentを務める小泉社長は心配無用を強調した。 「親会社のメルカリにおいても借り入れをはじめ、アントラーズにきちんと支援をしていくことで、資金繰りの不安などがある状況ではありません。かなり厳しい決算で、びっくりされた方がいるかもしれないが、こういう状況だと正しくお伝えすることがむしろ大事だと思っています」 2019年度で純資産が21億6900万円を計上した関係で、債務超過状態には陥っていない。昨シーズンも実施した投げ銭システムなど、メルカリのノウハウを生かしたデジタル施策をさらに拡充させ、同時進行で開幕前から準備を進めてきた複数の30周年記念事業を通じて増収を図る。