なぜ急ぐ? 「名古屋市博物館」の大改修 あわただしい計画に「抜本的な見直しを」の声も
「アジア大会」から逆算したスケジュール
そんな潮目が変わったのは、2026年に愛知県と名古屋市がアジア競技大会を共催することが決まってからだ。メインスタジアムとなるのは、サッカーJリーグの名古屋グランパスが長年ホームスタジアムとして使用してきた「瑞穂公園陸上競技場」で、建て替え工事が始まっている。 名古屋市博物館はこのスタジアムと同じ瑞穂区内にあり、距離も直線で1キロほどしか離れていないこともあって、市議会でも「博物館を改修するならアジア大会に間に合わせるべきだ」という議論が行われた。 その結果、アジア競技大会から逆算するスケジュールでまとまったのが、今回、市が公表した「名古屋市博物館魅力向上基本計画案」だったのだ。現在開会中の市議会定例会で予算が通れば、新年度から東館(新設)の工事と本館の設計が始まり、2023年度後半からは休館して本格的な工事に入る。そして、アジア競技大会が開かれる2026年度後半には本館の営業を再開する。東館を含めた全面オープンは2029年度になる予定だ。
市民ギャラリーを新築棟に移設、収蔵庫にも余裕が
大改修のコンセプトは「名古屋の歴史文化から『未来をつくる博物館』」で、歴史文化資料から名古屋ならではの「物語」をつむぎ、国内外に発信できるような施設を目指すという。 総事業費170億円の内訳を博物館に取材すると、「本館・外構リニューアル整備費(東館整備、資料輸送、展示リニューアル含む)に約148億円、資料をデジタル化するデータベース構築に約3億円、新たな資料の購入に約3億円、第2期工事や備品購入費などに約16億円」と回答。 大改修後は、展示空間が拡張され、マンガやアニメ、映画などの現代的なジャンルも取り入れる「時事展示室(仮称)」が新設される予定だ。入場者の多くが利用していた市民ギャラリーは、新設の東館に入る。また、収蔵庫も既設部分を拡張するほか、東館にも場所を確保する。これによって、これまで館外に分散保管していた所蔵品を館内に集約した上で、さらに新たな収蔵品をこの先19年ほどは受け入れられるようになるという。