透き通る琥珀色の調味料「白しょうゆ」 愛知・西三河の隠れた逸品の魅力とは?
「白しょうゆ」をご存じだろうか。淡口(うすくち)しょうゆよりもさらに淡く、透き通る琥珀色をした調味料だ。たまりや味噌など濃い色と味の調味料で知られる愛知県だが、対極とも言える白しょうゆも、同じ愛知県の現在の碧南市で約200年前に誕生した。地元の家庭や店に常備されているほか、ポテトチップスの中部限定味として販売されたこともある。全国的にはあまりなじみのない白しょうゆだが、実は、洋の東西を問わずプロの料理人からは一目置かれる存在だ。そんな愛知・西三河地方の隠れた逸品の楽しみ方などを紹介する。
出荷量は0.8%ながら、料理のプロ御用達
名古屋市の南に位置し、三河湾北西部の知多湾に面した碧南市では、農業、漁業、窯業などに加え、醸造業が営まれてきた。良質の地下水に恵まれ、市内を流れる一級河川の矢作川の流域に、小麦や大豆、米といった仕込みの原料を育てる農業地帯が広がっていたことなどが醸造業の発展した理由とされる。 「碧南市はしょうゆ蔵が6つ、みりん蔵が4つ、酒蔵が2つ、味噌蔵が1つある醸造のまち。なかでも、3つの蔵がある白しょうゆは発祥の地とされ、約200年の歴史があります。私にとって、家庭に白しょうゆとだしを合わせた白だしが常備してあるのが普通でした。一方で、市外や県外では十分に知られていません」。碧南市で生まれた碧南市観光協会の後藤千明さんは悔しそうに語る。 実際、白しょうゆはマイナーな存在だ。しょうゆはJAS規格で5種類に分けられるが、「しょうゆ情報センター」の資料によると、全国出荷量の8割以上を占めるのが「濃口しょうゆ」。そして出荷量が多い順に「淡口しょうゆ」、「たまりしょうゆ」、「再仕込みしょうゆ」と続くが、最も出荷量が少ない白しょうゆが占める割合はわずか0.8%しかない。 ただ、愛用しているのは地元の人々だけではない。日本の調味料をよく知る料亭や和食店などの料理人はもちろんのこと、最近はフレンチやイタリアンなどのシェフにもその良さが広がりつつあるという。「しょうゆの色が淡いため、上質な食材の色や持ち味を引き立てる」というのが、プロに支持される理由だ。