“西伊豆町生まれ”24年度は5人、初の1桁 静岡県内で史上最少か 子育て支援実施も歯止めがかからず
西伊豆町の2024年度の出生数が初めて1桁になる見通しであることが22日までに同町への取材で分かった。町によると、24年度の出生数(同日現在)は5人で、同年度中に出産を予定している母親もいない。推計人口2万人未満(1日現在)の静岡県内各市町や県健康福祉部によると、県内自治体で史上最少となる可能性がある。 同町の推計人口は6247人で、県内では4番目に少ない。出生者数は21年度が12人、22年度、23年度はともに13人と横ばいで推移してきたが、24年度は移住者など例外的な状況が発生しない限り、出生は5人のままになるもよう。町は「高齢化率が県内市町で最も高く、子育て世代が少ないことが要因ではないか」と分析した。 松崎町でも20年度に出生が9人と1桁を記録したが、同じ賀茂地域の下田と東伊豆、河津、南伊豆の他4市町では「少なくとも近年『出生1桁』の年度はない」(担当者)という。他に2万人未満の小山と森、川根本の3町でも出生が10人未満だった事例はこれまでないとみられる。 仁科認定こども園(西伊豆町)では年々園児は減少。24年度の同園の全園児は53人と、2000年前半と比べおよそ4割まで減った。斎藤雅子園長(51)は「今でも町内で園児が少なく、他の園と連携している。今後は近隣市町とも協力しないと、園児が同世代と関わる機会を確保できない」と声を落とす。 町内の子育て世代も不安の色を隠せない。1歳の子どもを持つ自営業山田龍哉さん(30)は「同世代の友達が少ないのは残念。働く場も限られていて、子育て世代が流失してしまわないだろうか」と指摘した。 町は少子化を受け、認定こども園と小中一貫校の再編を進めていたが、一部住民の反対を受け23年に白紙化。建設地や工費を巡り議論は長期化している。こども園の保育料・給食費、高校生までの医療費を無償化するなど支援を実施しているが、出生数の減少傾向に歯止めがかからない。町まちづくり戦略課は「継続的な支援に努め、子育て世代の移住定住促進も図る」と説明するが、課題は山積している。 ■賀茂地域では分娩終了へ 押し寄せる少子化の波 西伊豆町を含む伊豆半島南部の賀茂地区1市5町では、出産の分娩(ぶんべん)対応が実質終了することが判明した。 下田市の臼井医院は2025年1月限りで分娩対応を終えることを決めた。5町からも利用があったが、少子化で取り扱い件数が年々減少し、臼井文男院長は「医療スタッフの人件費や医療機器の更新費用を確保することが難しくなった」と話す。県賀茂保健所(同市)は、地域内では他に東伊豆町に助産院があると説明するが、この医院の話では緊急時の受け入れに限っていて、近年は出産を受け入れていないという。 今後は臼井医院での妊婦健診後、多くは伊豆の国市や伊東市の医療機関に分娩管理が引き継がれるとみられる。下田市の松木正一郎市長は22日、市議会全員協議会で分娩を巡る状況に言及。これまでも賀茂地区の住民のおよそ半数が地域外で出産していたとしつつ「過疎地の医療資源の確保は本当に難しい」と苦悩の色をにじませ、県や国へ支援を求める考えも示した。 出身者の里帰り出産のみならず、出産環境悪化は各自治体が進める移住推進にも影響を及ぼしかねない。南伊豆町の岡部克仁町長は「『子どもが産めない地域』と思われないよう(親への)サポートを手厚くする必要がある。移住希望者への影響はもちろんあるだろう」と懸念した。
静岡新聞社