なぜ急ぐ? 「名古屋市博物館」の大改修 あわただしい計画に「抜本的な見直しを」の声も
「名古屋市博物館」の大改修が始まろうとしている。名古屋市が今年1月に公表した計画案によると、総事業費は約170億円。年間入場者数が同規模の福岡市博物館の新築開館(1990年)時の総事業費(約172億円)に匹敵する一大事業だ。 しかし、過去を振り返ると、博物館を管轄する市教育委員会が再三再四、改修のための予算を要望しても、まとまった金額を確保できなかった経緯があった。それがなぜ今、まるで何かにせかされるように事業がスタートしようとしているのか? その背景を探ってみた。
名古屋市人口200万人突破記念で誕生
名古屋市博物館は1977(昭和52)年、名古屋市の人口200万人突破記念事業の一環として旧名古屋市立大学病院跡地に開館した歴史系博物館。建物は地下2階、地上4階の鉄筋コンクリート造で、当時の建設費は約45億円(2017年の「名古屋市公共施設白書」)。 「秋草鶉(うずら)図屏風」や黒楽茶碗「時雨」など国指定重要文化財7点を含む約27万点の歴史資料を所蔵。特に「三英傑」ゆかりの地として、戦国時代から江戸時代の資料収集や研究に内外の期待は高い。1988年に全面改装した2階の常設展示スペースでは、織田信長の坐像や名古屋城二之門の実物大展示などが存在感を放つ。 来場者は年間100万人を突破した1994年度がピークで、2007年度には総入場者数2000万人を達成している。近年は年間平均40万人程度で推移しているが、直近の2020年度はコロナ禍の制限で12万人弱にとどまっている。本館3階は市民向けの貸しギャラリーとなっており、入場者の3~4割がギャラリー利用者なのが特徴だ。
再三の予算要望も通らず…
建物や設備は40年以上が経過し、老朽化が目立っている。展示室や収蔵庫の狭さも深刻。すでに収蔵品は満杯で、館外に分散保管している状態だ。 市教育委員会は、2003年ごろからスペースの限界を意識して対策を検討し始めていた。しかし、再三の予算要望にも関連予算を確保するには至らず、手狭さは解消されないままだった。2019年度になってようやく「博物館の魅力向上」計画の調査費およそ300万円が予算計上された。 名古屋市では、2009年に就任した河村たかし市長が掲げる減税政策で予算が引き締められた。一方、河村市長は名古屋城の天守閣を500億円規模で木造再建する計画を打ち出している。こうした中、博物館は後回しにされてしまった感が否めない。