七五三で「撮影禁止」の神社が増加…出張撮影カメラマンの迷惑行為や偽装撮影が横行、ガイドライン策定も
家族や親戚と偽って撮影するカメラマンも
11月15日は、子どもの成長を祝う七五三です。神社やお寺を参拝し、かわいらしい晴れ着姿を撮影しようと考えている人も多いでしょう。ただ、過剰な演出・効果や大がかりな機材の持ち込みなどが他の参拝者の迷惑行為になるとして、「撮影禁止」とする神社も増えています。 「参道に寝転がって撮影するカメラマンが邪魔だった」 「撮影の演出で飛ばしているシャボン玉で服が汚れた」 「写り込む込んでしまうので、移動しろとどなられた」 神奈川県内の神社に仕える男性宮司(66)は、ここ最近、写真撮影にまつわるこうしたトラブルや苦情が相次いでいると打ち明けます。特に七五三の時期になると、出張撮影のプロカメラマンでごった返し、脚立やレフ板などが所かまわず置きっ放しになっていたこともあるそうです。 子どもの衣装替えにトイレを長時間使ったり、かき集めた落ち葉を舞い散らしたりする迷惑行為がエスカレート。「もはや『せっかくの記念撮影だから』と目をつぶっていられなくなりました」と宮司は話します。 2年ほど前から、プロカメラマンによる出張撮影を、事前申請が必要な許可制としましたが、「撮影しているのは親戚の人です」と口裏を合わせて強行する悪質なケースもあったといい、「神社に来てまでうそをつくなんて罰当たりな行為。七五三のお祝いなのに、お子さんもかわいそうです」と嘆きます。 境内の撮影を巡っては、神社やお寺ごとに対応が異なります。プロカメラマンの出張撮影を全面禁止としている場合もあれば、事前許可制、有料許可制などとしているケースもあります。 多くの神社やお寺では、家族や友人によるスナップ写真の撮影については、申請や許可は不要としていますが、鎮座1250年の歴史を誇る子安神社(東京都八王子市)は、社殿内での撮影や祈祷中の社殿内が写り込む撮影を禁止しています。明治神宮(東京都渋谷区)も商業目的の撮影やプロカメラマンによる出張撮影を禁止するとともに、一般参拝者の御祈願祭中の撮影、三脚を用いた撮影を禁止しています。 境内で記念撮影を考えている場合は、事前にそれぞれの神社やお寺のルールを調べておくといいでしょう。 一部神社の厳しい対応や参拝者らの苦情を受け、写真撮影業界も対策に乗り出しています。写真撮影での迷惑行為に対して、出張撮影サービスを運営する「ラブグラフ」(東京都渋谷区)、「ピクスタ」(同)、「OurPhoto」(東京都中央区)の3社は、共同で2023年10月に「神社仏閣撮影ガイドライン」を策定しました。 ガイドラインでは、撮影前の確認事項として、撮影可否、撮影可能範囲、ストロボの使用可否のほか、撮影者の服装や身だしなみにも触れています。撮影中に注意すべきこととして、〈1〉ご祈祷の前後に撮影する〈2〉祭壇が写らないように配慮する〈3〉小さな声で会話する〈4〉荷物をコンパクトにまとめる〈5〉敬意を込めた行動――の五つのポイントを挙げています。 今年9月には「七五三撮影セミナー」を行い、3社に所属するカメラマンら270人が、神社仏閣撮影でのマナーや着物の取り扱い方などを確認しました。ピクスタの古俣大介社長は「業界全体で撮影マナーの向上に取り組むことが重要」とコメントしています。 今年、七五三参りを予定している娘を持つ東京都立川市の父親は、「次に着物姿を見るのは成人式だろうから、記念になる写真を撮りたい」と話していました。見栄えだけの写真より、家族の楽しい思い出が詰まった一枚が残せるといいですね。 (読売新聞メディア局 鈴木幸大)