38年ぶり日本一に輝いた阪神タイガース そのチーム名とユニフォームから感じる古代中国の世界観とは?
長安と四つの動物
日本列島に確固たる国家体制が築かれたのは、7、8世紀、中国からの文字(漢字)によって律令体制を整えたころで、その権力の基盤として築かれた都市、平城京(奈良)も、平安京(京都)も、唐の長安の縮小コピーであった。 その長安は、よく「碁盤の目」といわれるように、実に整然とした美しい直角格子の道路で構成されている。皇帝の住居である皇城が北辺中央にあるのは北極星を天帝とすることからである。そしてその東西南北にそれぞれの動物(神獣)が対応しているのだ。東は竜、西は虎、南は鳥(鳳あるいは孔雀)、北は亀と蛇が合体した玄武という動物である。阪神タイガースが虎になるのは、京都(日本文化の中心の意味)から見て大阪が西にあるからで、中日ドラゴンズが竜になるのは、京都から見て名古屋が東にあるからだと思われる(タイガースという呼称は阪神電鉄社員の公募によるようでいくつかの由来がある。ドラゴンズはそのときのオーナーが辰年生まれだったこともあるようだが、そういったことも含め、総合的な決定には文化的な無意識がはたらいているものだ)。また南海ホークスが鳥(鷹)になるのも南と鳥が結びついたのではないか。 そして、この東西南北にはそれぞれの色彩が対応している。東は青、西は白、南は赤(朱)、北は黒(玄)、である。皇城の中央からまっすぐ南へ伸びる道路は朱雀大街(日本では朱雀大路)と呼ばれ、東は青竜が、西は白虎が守る。北の玄武の玄はもともと黒の意味である。中日のユニフォームに青が多いのはそのためであり、阪神のユニフォームが、いかにも虎らしい黄と黒の縞模様ではなく、白っぽいピンストライプが多く、ときに白虎のロゴマークが使われるのはそのためであろう。 さらにこの東西南北にはそれぞれの四季が対応している。東は春、南は夏、西は秋、北は冬で、青春、朱夏、白秋、玄冬という言葉があるのはそれによる。また、これに人生の年齢期が対応して、幼年期は玄冬、青少年期は青春、壮年期は朱夏、高齢期は白秋、という概念があるが、なぜか青春だけが人口に膾炙している。(参照・拙著『ローマと長安-古代世界帝国の都」講談社現代新書1990年刊)