月を目指す考え「確実にあります」若田宇宙飛行士が会見7月21日(全文2)
米露の飛行士を含む4人でどんな姿を世界に見せたいか
読売新聞:読売新聞の【ワタナベ 00:33:45】です。よろしくお願いします。最初の質問でもあったんですけども、ウクライナ情勢の関連で伺います。今回もロシアの飛行士とアメリカの飛行士と若田さんっていうクルーが決まったわけですけれども、世界にその4人でどのような姿を見せたいか、どのようなメッセージを発信したいかをお聞かせください。 若田:国際クルーの下で仕事をしていくっていうことは、これまでと同じだと思いますけれども、やはり国際協力の重要性、まさにこういったときに多くの方に感じていただけるんじゃないかなと思いますし、そういう意味で、われわれはISSでのさまざまな作業、その成果をきちんと出していくっていうことがわれわれに求められてると思いますので、そのために残された時間、きちんと過ごして、それから打ち上げまでの時間っていうのは、かなりもう少なくなってきていますけれども、軌道上の長丁場の半年間の滞在、やっぱりそこで士気をきちんと維持して、で、チームワークを維持して、成果を出していきたい。そこに留意したいというふうに思います。 それと同時に、技術的な観点からは、今回、ロシアのクルーがアメリカの宇宙船で搭乗する。それから米国の宇宙飛行士がロシアのソユーズ宇宙船で搭乗するっていうことが同時に発表されたわけですけれども、これはやはり宇宙に行く乗り物が1つであると、もしそのシステムになんらかのトラブルがあった場合に、その宇宙船を使えなくなってしまうことがあるわけですよね。国際宇宙ステーションを安定的に運用していくためには、バックアップも含めて、宇宙往還のシステムっていうのを複数持っておくってことは非常に重要なんですね。
米露のシート交換成立は非常に重要
そういう意味で今回、米露の宇宙飛行士がそれぞれの国の宇宙機に、それぞれの国の宇宙飛行士が搭乗するということで、国際宇宙ステーションの安定的な運用につながると。これは非常に大きい、非常に重要なことだと思います。 同じようなことは、実はスペースシャトルとソユーズでもあったんですね。先ほど、野口聡一宇宙飛行士のお話がありましたけども、野口さんが最初に宇宙に行ったときっていうのは、STS-114っていう、これはスペースシャトルのコロンビア号の事故の直後。直後っていうか2年半後に、飛行再開のときのフライトだったんです。国際宇宙ステーションっていうのは、1998年から組み立てが始まりましたけど、2003年のスペースシャトルコロンビア号の事故、スペースシャトルは2年半飛べなかったんですよね。その2年半、宇宙ステーションが中断したかっていうと、中断せず運用を続けられたんですね。それはロシアのソユーズ宇宙船があったからなんですね。 ですから、ISSっていう国際協力プロジェクトのロバスト性っていう観点からは、複数の異なる宇宙機によって宇宙ステーションに行く能力を維持するっていうことは非常に重要ですので、そういう意味で今回、米露のシート交換が成立したっていうことは、国際協力プロジェクトのISSのロバスト性の維持、向上のために非常に重要だというふうに思っています。 読売新聞:すいません、追加で1点なんですけど、今回ISS延長の議論が今なされているわけですけども、日本はまだ延長の態度を表明していませんが、若田さんの意見があれば何かお聞かせください。 若田:昨年の米国時間で12月31日にバイデン・ハリス政権のほうが、2030年まで米国は宇宙ステーションを延長するというコミットメントを表明されて、米国以外のところの国っていうのは、各国でその検討がされていると。延長に関しましては、当然、日本国の政府の決定ではありますけども、JAXAはそれを技術で支えるためにさまざまな検討をして、技術検討をして政府の活動を支援しているという段階ですけども、宇宙飛行の現場の観点から言えることは、先ほどもちょっとお話ししましたけども、「きぼう」の優れた部分っていうのがたくさんあると思いますね。超小型衛星の放出能力、ロボットアームとエアロックを統合した運用ができるとか、それから今開発が進められているHTV-Xという新型の宇宙ステーション補給機ですね。