中学受験を途中でやめて、小5から高校受験コースに 決断までの親の葛藤 #令和の親
毎年2月~3月に、多くの中学受験塾で新年度のカリキュラムが始まる。首都圏では中学受験を選ぶ人が増えている中で、入塾するかどうか、どのような選択肢がわが子に合っているのか、悩む保護者は多い。中学受験をしないと決めても、受験組がハードな勉強をしているため、不安を抱く人も。そんな中、小学生のうちから高校受験に照準を合わせたコースに通う潮流があるという。コース自体は以前からあるものの、中学受験に疑問を持ったときの受け皿として、改めて注目されているようだ。選択の理由、小学生向け高校受験コースの実態や課題は?親や塾、識者に話を聞いた。(取材・文:平林理恵/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
中学受験はやめても勉強をやめるのには抵抗感 親の葛藤
東京都大田区在住の竹田知香さん(仮名)は、長男が小学校低学年の頃から中学受験を目指した。しかし、5年生のときに高校受験に切り替えたという。 知香さんの実家は医師の家系で、長男は幼いころから「お医者さんになりたい」と口にしていた。「将来の選択肢を狭めないためにも、学習は早めにスタートさせたい」と考えた知香さんは、中学受験を視野に低学年のうちから通塾を開始させた。 「本人が本気で何かをやろうとしたときに、『勉強してないから無理でしょ』とならない環境をつくっておきたいと思ったんです」 ところが、その後野球を始めた長男はすっかり夢中になり、ほどなく「甲子園に行きたい」「野球の選手になりたい」と言い出すように。 「それからは、野球が強くてハイレベルな中学を目指して週4日通塾し、それ以外の時間は寸暇を惜しんで野球をするという毎日が始まりました。野球も勉強もすごくがんばっていたと思います」 だが、学年が上がるにつれ、野球への思いは強まるばかり。次第に受験勉強との両立が苦しくなっていった。 「受験が終わるまで野球を我慢するか、中学受験をやめるか。半年間くらい葛藤がありました。息子の気持ちは決まっていた。でも私は、それまでにかけてきた時間やお金、自分の労力を思うと簡単にはあきらめられず、『受けるだけ受けることにしたら』などと言ってしまいました」 そんなとき、悩みを相談した友人から「塾そのものはやめず、高校受験コースに切り替えるという手もあるよ」と言われたという。聞けば、通塾は週2回、1回2時間程度。負担の少ない通塾で、高校受験を見据えた学習を小5から中3までじっくり積み重ねていく。 「中学受験をやめるからといって、勉強をやめるわけじゃない。少しペースを落とし、やりたいことをやる時間を確保したうえで、高校受験を目指して進んでいく。そういう選択肢もあったのかと驚きました。情報収集はとても大事、教えてくれた友人には感謝しています」 結局、通っていた中学受験塾を5年生になるタイミングで退塾し、「高校受験コース」への通塾に切り替えた。それまで受験にノータッチだった夫に、「ここまでやってきたのに、もったいない」と言われたが、「勉強は続けるから」と説得した。 「現在6年生ですが、勉強はしっかりできているし、野球にも集中して取り組めていて、バランスがとてもいい。切り替えて本当によかったと思います」