中学受験を途中でやめて、小5から高校受験コースに 決断までの親の葛藤 #令和の親
「小学生向け高校受験コース」どんな内容?
小学生向けの高校受験コースは、中学受験コースのように誰もが知っているわけではない。 「口コミで知って入塾する方が一定数います」と話すのは、進学塾大手「早稲田アカデミー」の教務本部長、竹中孝二さんだ。竹中さんによると、高校受験コースを選択する家庭には3つのケースがあるという。 「1つ目は、中学入試の勉強を始めてみたものの、通塾が負担になったり、授業についていけなくなったりして高校入試に切り替える場合。2つ目は、自制心や粘り強さが養われるのがこれからで、入試の時期を12歳ではなく15歳にしたほうが、いい結果が望めそうな場合。3つ目は、スポーツや習い事などどうしても続けたいものがある場合」 いずれの場合も、高校受験を選択することで、中学受験のための塾通いによる負担をなくしたいという親の思いがある。にもかかわらず、空いた時間に再び塾に通わせるのはなぜだろう。竹中さんはこう見る。 「11歳、12歳というのは大切な成長期です。中学受験組が生半可でない勉強を続けている中、塾をやめることにしたとしても、その貴重な2年間を知的に放置したくない、何かに取り組ませたいと考えるのは当然ではないでしょうか。高校受験コースなら、週2回で1回2時間程度です。内容は小学校の領域のなかで中学に移行していくときに必要性の高いものに絞り込み、子どもたちに無理はさせない。ちょうどいいバランスだと感じて選ぶ保護者の方が多いようです。 志望校に合格していただくことは進学塾としての責務だと思います。一方でいつ受験をするかよりも、お子様が目標に向かって自立しながら真剣に取り組むことで将来の糧となる経験を得ることに価値があると考えています」 実際にはどんな内容なのだろうか。 早稲田アカデミーには、小学生を対象とした高校受験コースとして、「Kコース」と「P(Progress)コース」の2つがある。Kコースは、公立中学に進んで高校受験をする人を対象としたコースで、早稲田アカデミーの通常校舎で開講。一方Pコースは、難関中高受験専門の「ExiV」と名づけられた5つの校舎だけで開講している。Pコースの設置は2020年4月からで、Kコースは名前こそ違えど20年以上前に既に存在していたそうだ。一定のニーズが常にあるという。 カリキュラムを見ると、中学の先取り学習は行われず、たとえば算数なら、場合の数、割合と比、立体図形の空間認識などの単元が並ぶ。 「中学数学に入るのは6年生の2月から。一方で、算数が得意な子には、思考と試行を要する問題を渡して、知的好奇心を刺激していきます」 授業のほかに1カ月半から2カ月に1回、直近で習った内容のチェックテストやさらに範囲を広げたまとめテストが行われる。小学校の学習指導要領の範囲にとらわれない、中学受験の入試や模試との違いがここにある。 「範囲の決まったテストはちゃんと勉強すれば、結果が出せる。テストに備えることで学習習慣がつき、自己肯定感も高められる。これがいちばん大きいのではないでしょうか」 前出の知香さんは、「塾のテストが中学での定期テストの予行演習になり、内申点をしっかり取っていくための対策にもなる」と話す。