中学受験を途中でやめて、小5から高校受験コースに 決断までの親の葛藤 #令和の親
教育評論家で前放送大学非常勤講師の小宮山博仁さんは、こう分析する。 「コース自体は、20年以上前から、塾が少子化対策として小学生を囲い込むために開講してきた。これが中学受験の過熱化に疑問を持った保護者のニーズにも合致して伸びてきているのではないでしょうか」 一方、首都圏に集中する中学受験のように、高校受験コースが地域格差を助長する面もあると指摘する。 「いい高校が集中しているところにコースが設置される。選びたいけれど選べない子を大量に生んでしまう可能性があります」
中学受験の過熱 疑問持つ識者の声も
今年、首都圏の中学受験の受験者数は推定5万2400人で、前年比200人減(首都圏模試センター調べ)。10年ぶりに減少した。少子化の影響とみられているが、中学受験の過熱化に疑問を持つ声も根強くある。 塾通いのスタートは、一般的には小学3年生の2月。当初は週2回程度だが、学年が上がるとともに通塾回数も上がり、時間も長くなる。通常授業に加え、季節講習、志望校別特訓、模試‥‥‥子どもの学習時間もそれをサポートする親の時間もどんどん増え、同時に塾にかかる費用もかさんでいく。実力をのばし合格に近づいていく子がいる一方で、どうしても適応できない子も出てくる。伴走する親との関係が悪化してしまうことも少なくない。なんとか最後まで走り切っても、晴れて第一志望の合格を勝ち取るのは約3割だけだ。
約4万4000人のフォロワーがいるXアカウント「東京高校受験主義」で高校受験の魅力を発信しているマコトさん(仮名)は、「東京の中学受験の過熱ぶりに危機感を覚えている」という。 「(首都圏では)中学受験はするものという空気があるため、もともとそのつもりがなかったり、あまり考えないままに通塾を始めてしまい、あとになって悩んでいるという声はよく聞きます」 公立中学や高校受験の現状も正しく伝わっていないそうだ。 「受験のときの内申点は順当につくし、学校選びの選択肢も広い。特徴のある魅力的な学校も多い。先入観から、感じる必要のない不安を抱えているケースは少なくありません」 中学受験の過熱化による進路選びのミスマッチ。小学生のための高校受験コースは、軌道修正のための一つの手法として選ばれているという側面もありそうだ。