提言CIFIUSの審査は複数の段階があるが、まだ大統領の決定の段階にはまだ至っておらず、バイデン、ハリス、トランプなどの買収阻止に関する発言は、政治的な意図を持った発言の枠内にとどまるもの、と理解すべきである。 買収反対の理由として、安全保障上の理由を強調している点が興味深い。その理由の要因が、USスチール側にあるのか、それとも日鉄側にあるのかが、現段階では明確にされていない。その要因に関する問題を解決することができれば、今後買収は成立する可能性がある。 つまり、雇用や他の経済的理由ではなく、安全保障上の理由とされている点が重要である。米国内の工場での雇用の維持など、国内経済に与える影響が問題ではないため、日鉄側は現地生産の維持や雇用の維持を主張しても、米国側を説得することは困難であろう。 安全保障上の理由のポイントは何か、日鉄には情報収集とロビー活動に期待したい。
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コメンテータープロフィール
岡山県出身。一橋大学大学院修了(博士・法学)。防衛庁防衛研究所主任研究官(アメリカ研究担当)より拓殖大学海外事情研究所教授。専門は、国際関係論、安全保障、アメリカ政治、日米関係、軍備管理軍縮、防衛産業、安全保障貿易管理等。経済産業省産業構造審議会貿易経済協力分科会安全保障貿易管理小委員会委員、外務省核不拡散・核軍縮に関する有識者懇談会委員、防衛省防衛装備・技術移転に係る諸課題に関する検討会委員、日本原子力研究開発機構核不拡散科学技術フォーラム委員等を経験する。特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の自律型致死兵器システム(LAWS)国連専門家会合パネルに日本代表団として参加。