見解米国は最近雇用状態が良好でしたが、10月に悪化しました。大規模ハリケーンの到来などが大きな要因だと指摘されています。ただし、大統領選挙直前という文脈では、共和党はそのような理解はせず、バイデン=ハリス政権の失策ゆえだと説明します。近年の米国では二つの米国と呼ばれるほどまでに分断が鮮明になっていますが、経済に対する評価についても客観的な評価というよりは党派的な評価が際立つようになっています。すなわち、民主党のバイデンが大統領になった途端、共和党支持者は経済が悪化したと(客観的な数字とは関係なく)評価するようになり、そのような言説が続いていると指摘されています。今回、具体的な数字で雇用状況が悪化したと出たことは、共和党支持者に「民主党政権が失敗した」との確信を抱かせることになったと言えそうです。
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コメンテータープロフィール
専門はアメリカ政治。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了、博士(法学)。主要著書に、『アメリカ大統領とは何か:最高権力者の本当の姿』(平凡社新書、2024年)、『混迷のアメリカを読み解く10の論点』(共著、慶應義塾大学出版会、2024年)、『〈犯罪大国アメリカ〉のいま:分断する社会と銃・薬物・移民』(弘文堂、2021年)、『格差と分断のアメリカ』(東京堂出版、2020年)、『アメリカ政治入門』(東京大学出版会、2018年)、『アメリカ政治講義』(ちくま新書、2018年)、『移民大国アメリカ』(ちくま新書、2016年)、『アメリカ型福祉国家と都市政治』(東京大学出版会、2008年)など。