終盤戦は政策論争より中傷合戦 米大統領選、大接戦のまま投票へ
米大統領選は5日、投開票日を迎える。世論調査では民主党のカマラ・ハリス副大統領(60)と共和党のドナルド・トランプ前大統領(78)の大接戦が続き、激戦7州の行方が当落を左右する展開になっている。両陣営は終盤では政策論争よりも、相手候補のマイナス面を強調する「ネガティブキャンペーン」に力を入れ、投票先を決めていない有権者の取り込みを図っている。 【図解でわかる】歴代の米大統領、人気なのは誰? 大統領選では人口などに応じて全米50州と首都ワシントンに割り当てられた計538人の選挙人の獲得数を競う。政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス(RCP)」の各種世論調査の集計(3日現在)によると、全米の支持率はトランプ氏48・5%、ハリス氏48・4%とほぼ並んでいる。 投票日2日前の時点で比較すると、トランプ氏は16年の前々回(1・8ポイント差で劣勢)、20年の前回(7・2ポイント差で劣勢)よりも善戦している。激戦7州ではトランプ氏は西部アリゾナ州で2・6ポイント差、南部ジョージア州で1・9ポイント差でリード。南部ノースカロライナ、西部ネバダ両州もやや優勢。激戦州の中で選挙人の数が19と最多で最も重要な東部ペンシルベニア州では、トランプ氏のリードは0・3ポイントと大接戦だ。 ハリス氏は中西部ミシガン(0・9ポイント差)、ウィスコンシン(0・3ポイント差)両州でややリード。民主党が優勢な州で順当に勝利した上で、ペンシルベニア州を含めた3州を制すれば、選挙人獲得数が当選ライン(270人)に届く。 終盤戦でハリス氏は「トランプ氏の資質」に焦点を当てている。「国民を分断し、互いに恐れさせようとしてきた『トランプ氏の10年間』からページをめくろう。もうたくさんだ」と強調。「国民の生活を良くする方法を考える人物ではない。(政敵への)報復にこだわり、絶対的権力を欲している」と批判する。 ハリス氏は8月、選挙戦から撤退したジョー・バイデン大統領(81)に推され、党候補指名を受けた。候補の若返りで党内は活気づき、「女性初の米大統領」への期待感も膨らんだ。しかし政策の具体化が遅れ、9月以降は支持率が伸び悩んだ。 最近は、トランプ陣営の「決起集会」でコメディアンが米自治領プエルトリコを「ごみの島」と呼んだことを取り上げ、民主党離れが指摘される中南米系の取り込みを図っている。「望むと望まざるとに関わらず、女性を守る」と発言したトランプ氏に対して、「女性の主体性や権利」も訴えた。 一方、トランプ氏は「(前政権下の)4年前と今と、どちらが好ましいか」と問いかけ、インフレ(物価高)と不法移民の増加に不満を抱く有権者に訴えかける。「史上最悪、最低の副大統領」「知能が低い」などとハリス氏を中傷し、「カマラ(ハリス氏)が壊したものを、我々が修復する」と主張している。 共和党内からは、無党派層から敬遠されないように個人攻撃を控えるよう求める声があったが、トランプ氏は個人攻撃を続行。「男らしさ」「キリスト教の信仰」を強調する言動も増え、保守層の熱気をあおっている。保守色を薄め、無党派層に主張を寄せるのが共和党候補の本選でのセオリーだが、トランプ流をあえて貫いた。 今回は、左派の「緑の党」や保守系の「リバタリアン党」などの小政党、無所属の候補らも出馬している。激戦州でハリス氏とトランプ氏の得票が数千~数万票の僅差になる場合、「第3の候補」がどちらの支持基盤から票を奪うかが勝敗を分ける展開もあり得る。【ワシントン秋山信一】