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民主党全国党大会が始まる。米民主党とはどのような政党で、ハリスとは何者か? #専門家のまとめ

西山隆行成蹊大学法学部政治学科教授
ノースカロライナ州で経済政策を発表するハリス(写真:ロイター/アフロ)

11月5日の大統領選を前にして、8月19-22日に民主党の全国大会が開催されます。民主党の候補がカマラ・ハリスに変わったことで、大統領選挙の構図は一変しました。しかし、ハリスというのがどういう人物なのか、そして、そもそも民主党とはどういう政党なのか、というのは、なかなかわかりにくいのではないでしょうか。今回はハリスと民主党の性格を説明する上で参考になる記事をまとめてみました。

ココがポイント

▼候補が交代するまでは、ハリス副大統領は組織運営に難を抱えており、バイデン政権の悩みの種だという議論が展開されてきました。その背景には民主党の党内対立がありました。

・渡辺将人「バイデン政権を悩ますハリス副大統領という難題」(SPF笹川平和財団アメリカ現状モニター、No.102、2021.8.27)

▼ハリスが大統領候補になってからは、民主党内の様々な勢力が手のひらを返したかのようにハリスを称賛しています。その背景にはトランプへの対抗などに加えて、左派の意向が強く反映されていると言います。

・渡辺将人「民主党左派とカマラ・ハリス:「擬似サンダース政権」継続圧力と予備選の洗礼なき指名の功罪」(SPF笹川平和財団アメリカ現状モニター、No. 158、 2024.8.12)

▼米国の二大政党は地域政党の連合体、利益集団の集合体という性格があり、内部対立の危険を常に秘めています。米国の民主党の基本的な性格を知っておく必要があるでしょう。

・西山隆行「<ハリスも身内に足を引っ張られる?>敵に投票、離党… 民主党で内部対立が頻発する理由とは」(Wedge Online、2024年8月16日)

エキスパートの補足・見解

 ハリスは副大統領を務めていることもあって知名度は抜群に高いですが、彼女がどのような政策的立場をとっているのか、そもそも、政治にどのように向き合ってきた人物なのか、ということはあまり知られていません。とりわけ、ハリスはこれまで自らの外交政策について体系的な形で説明する機会を持っていませんでした。党大会で民主党がハリスをどのような人物として描き出すかに注目する必要があります。

 民主党内には穏健派対左派の対立があるとしばしば指摘されます。しかし、実は左派の内部にも経済左派とアイデンティティ重視派、環境問題重視派など多様な立場がありますし、穏健派内部でも労働組合との距離感などで相違があります。11月の大統領選挙の一般投票まで、民主党の内部対立がどのような形で現れるのか(あるいは現れないのか)にも注目が必要です。

成蹊大学法学部政治学科教授

専門はアメリカ政治。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了、博士(法学)。主要著書に、『アメリカ大統領とは何か:最高権力者の本当の姿』(平凡社新書、2024年)、『混迷のアメリカを読み解く10の論点』(共著、慶應義塾大学出版会、2024年)、『〈犯罪大国アメリカ〉のいま:分断する社会と銃・薬物・移民』(弘文堂、2021年)、『格差と分断のアメリカ』(東京堂出版、2020年)、『アメリカ政治入門』(東京大学出版会、2018年)、『アメリカ政治講義』(ちくま新書、2018年)、『移民大国アメリカ』(ちくま新書、2016年)、『アメリカ型福祉国家と都市政治』(東京大学出版会、2008年)など。

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