補足ガラント解任はネタニヤフ政権がこれまで以上に極右的になったことを象徴する。 記事で言及される「見解の相違」のうち両者を隔てる最大のポイントは「ユダヤテロ」の取り扱いの問題だ。 ヨルダン川西岸ではユダヤ人入植者によるパレスチナ人襲撃が急増するなど過激主義の浸透が目立つ。その背景にはネタニヤフ政権でリクードと連立を組む極右政党の台頭と、ベン=グヴィル国家安全保障相など極右政治家による煽動がある。 その結果、国内諜報を管轄するイスラエル総保安庁は8月、ネタニヤフ政権に対して「“ユダヤ人テロ”が国家を脅かす」と警告した。この際、ガラントは国防相として総保安庁を支持した。入植者がイスラエルの法律すら無視して暴走していることへの危機感があったといえる。 しかし結果的に、ベン=グヴィルなど極右政治家ではなくガラントが内閣を去った。それはガザや西岸での軍事活動がさらにエスカレートするきっかけにもなり得る。
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コメンテータープロフィール
博士(国際関係)。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学などで教鞭をとる。アフリカをメインフィールドに、国際情勢を幅広く調査・研究中。最新刊に『終わりなき戦争紛争の100年史』(さくら舎)。その他、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、『世界の独裁者』(幻冬社)、『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『日本の「水」が危ない』(ベストセラーズ)など。