Yahoo!ニュース

前田恒彦

前田恒彦認証済み

認証済み

元特捜部主任検事

報告

解説罰金を納付せず、強制執行する財産もなければ、労役場留置、すなわち最長2年間、刑務所などで作業が義務付けられます。しかし、追徴金にはこの制度が適用されません。 すでに使い果たされていて強制執行できる財産がないとか、どこに隠されているか分からないといった場合には、検察としても徴収停止による督促の取りやめや徴収不能で終わらざるを得ないわけです。 しかも、どれだけ高額で悪質でも、追徴金の徴収権は1年で時効になります。脱税に対する追徴課税が最低でも5年は時効にかからず、不正があればさらに延びるのと比べると対象的です。 法務省の統計をみても、刑事事件の判決で言い渡された罰金や追徴金の徴収率を比べると、前者が9割を超え、労役場留置を合わせるとほぼ10割であるのに、後者は極めて低く、5割程度にとどまる年もあります。犯罪により不法に得た財産をはく奪する観点から、より効果的で厳しい法改正が必要でしょう。

同じ記事に対する他のコメンテーターコメント

  • 多田文明

    詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

    解説「追徴金の累積未収総額が2023年度末時点で、1251億円に上った」とのことで、犯罪追徴金の「取りは…続きを読む

コメンテータープロフィール

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

前田恒彦の最近のコメント