解説インフレを考慮して生活保護基準は2年間据え置きにされていたが、実質的な引き下げだ。しかも、元々引き下げる方針だった。生活保護基準は日本社会のナショナルミニマムであり、最低賃金、住民税非課税、保育料減免、大学等の授業料減免など、様々な制度と連動している。単純に生活保護基準を引き下げると、これらの制度の受益者が減少するので、生活保護を叩けば生活は余計に苦しくなるだろう。 また、不正受給は金額ベースで1%にも満たないのに対し、捕捉率(受給基準を満たす人のうち実際に受給している人の割合)は2割程度だと推計されている。したがって、本来深刻な問題は漏給であり、生活保護基準以下の低年金や低賃金で生活している人々が膨大に存在することだ。この膨大な漏給の要因の一つは、根強い生活保護に対するバッシングである。しかし、誰もが病気や障害などで働けなくなる時はある。生活保護と無関係な人はいない。
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コメンテータープロフィール
NPO法人「POSSE」代表。年間5000件以上の労働・生活相談に関わり、労働・福祉政策について研究・提言している。近著に『賃労働の系譜学 フォーディズムからデジタル封建制へ』(青土社)。その他に『ストライキ2.0』(集英社新書)、『ブラック企業』(文春新書)、『ブラックバイト』(岩波新書)、『生活保護』(ちくま新書)など多数。流行語大賞トップ10(「ブラック企業」)、大佛次郎論壇賞、日本労働社会学会奨励賞などを受賞。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。専門社会調査士。
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