Yahoo!ニュース

韓国大統領の逮捕状の期限延長申請、泥沼化する「公権力」対「公権力」 #専門家のまとめ

西岡省二ジャーナリスト/KOREA WAVE編集長
6日、韓国大統領官邸付近を行き来する警察関係者(写真:ロイター/アフロ)

 韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に対する逮捕状の期限を迎えた6日、合同捜査本部は逮捕状の期限延長をソウル西部地裁に申請した。合同捜査本部は今月3日に逮捕状執行に臨んだものの、大統領警護処や軍関係者ら約200人が構築した「人の壁」に阻まれ、断念した経緯がある。合同捜査本部が再び、尹大統領の身柄確保に乗り出す意向を宣言した形で、裁判所が再度、逮捕状を発付するか、判断が待たれる。

ココがポイント

ソウル西部地方裁判所は12月31日、内乱を首謀した容疑で尹氏への逮捕状を発付した
出典:毎日新聞 2024/12/31(火)

(大統領の弁護団は)拘束令状を発付したことを不服とし、憲法裁判所に効力停止を求める仮処分を申し立て
出典:聯合ニュース 2024/12/31(火)

大統領公邸に「籠城」さながら大統領警護処の部隊が布陣し、執行を阻む状況が繰り返される限り、衝突なしに執行は困難
出典:産経新聞 2025/1/4(土)

高官犯罪捜査庁(高捜庁)は6日、ソウル西部地方裁判所に対し、逮捕状の期限延長を申請した
出典:毎日新聞 2025/1/6(月)

エキスパートの補足・見解

 尹大統領に対する逮捕状は7日午前0時に失効するため、合同捜査本部は出直しを図る。

 1回目の執行時、合同捜査本部側は計150人を投入したが、警護処側200人余りとの間で衝突が発生し、執行を中止した。警護処が陸軍大統領直属部隊の兵士らも動員する一方、合同捜査本部も警察特殊部隊や刑事機動隊の投入も検討したため、現場は緊迫した状態が続いた。

 合同捜査本部側は次回、大幅に人員を増やす考えだ。執行を妨害する警護処職員を現行犯逮捕する案も検討している。ただ、合同捜査本部側も必ずしも一枚岩ではなく、「高捜庁は警察をあたかも『下請け業者』のように扱っている」(尹大統領側弁護団)ようにも映る。

 一方、警護処は鉄条網の設置など、防御態勢を強化する姿勢を鮮明にしている。また尹大統領側は「高捜庁による捜査そのものや逮捕状請求、執行のすべての手続きが違法だ」として、執行に関与した高捜庁長ら7人を特別公務執行妨害などの容疑で告発し、法的対応を進めている。

 尹大統領逮捕を試みる合同捜査本部、それに抗う警護処など大統領側布陣。「公権力」対「公権力」の攻防は、まさに国の分裂を象徴している。

ジャーナリスト/KOREA WAVE編集長

大阪市出身。毎日新聞入社後、大阪社会部、政治部、中国総局長などを経て、外信部デスクを最後に2020年独立。大阪社会部時代には府警捜査4課担当として暴力団や総会屋を取材。計9年の北京勤務時には北朝鮮関連の独自報道を手掛ける一方、中国政治・社会のトピックを現場で取材した。「音楽」という切り口で北朝鮮の独裁体制に迫った著書「『音楽狂』の国 将軍様とそのミュージシャンたち」は小学館ノンフィクション大賞最終候補作。

西岡省二の最近の記事