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韓国・2度目「弾劾」採決と分裂含みの与党 #専門家のまとめ

西岡省二ジャーナリスト/KOREA WAVE編集長
7日の弾劾訴追案の採決の様子(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の弾劾訴追案が14日、再び採決される。前回(7日)のように与党「国民の力」所属議員の「集団退場」は見られない可能性が高く、可否は同党議員の態度にかかっている。ただ党内は「親尹派」と「非尹派」で対応に差があり、弾劾訴追案可決・与党分裂の可能性も語られている。

ココがポイント

私は最後の瞬間まで国民の皆さんと一緒に戦います。

出典:朝鮮日報 2024/12/13(金)

「国民の力」が否決を目指す方針に変わりはないが、韓国メディアはこれまでに7人の与党議員が賛成に回る意向を表明したと報じており、可決は目前に迫っている。
出典:時事通信 2024/12/13(金)

(韓代表は)「(略)事実上内乱を自白する趣旨の内容だった」と評した。これに対し、尹大統領派の議員を中心に「(韓代表は)辞任してください」「降りてください」などの抗議が相次ぎ、議員総会は大荒れとなった。
出典:朝鮮日報 2024/12/13(金)

尹大統領の「秩序ある早期退陣」を主張してきた与党・国民の力も現実を直視しなければいけない。

出典:中央日報 2024/12/13(金)

エキスパートの補足・見解

前回(7日)の弾劾訴追案は、国民の力の大多数が採決そのものに参加せず、投票箱を開けられないまま廃案となった。だが今回は波乱含みの展開になりそうだ。尹大統領が12日の国民向けの談話で、自ら辞める意思のないことを明らかにしたため、与党内で亀裂が入っているからだ。「秩序ある退陣」を掲げてきた韓東勲代表は「弾劾賛成」に立場を変え、尹大統領を引きずりおろそうとしている。

12日の院内代表の選挙でも、尹大統領に近い議員が「弾劾案否決」を訴え、「弾劾案賛成」を掲げる対抗馬を抑えて当選した。ただ対抗馬支持も3割以上いて、党内の亀裂を浮き彫りにした。同党は14日の議員総会で最終方針を決定するが、1回目の採決時のような団体行動は難しくなりつつある。

弾劾案可決に必要なのは在籍議員の3分の2(200議席)以上の賛成。国民の力から8票以上の造反が出れば、野党側の票と合わせて可決となる。与党では「賛成」の可能性を示唆するのは7人。まだ「造反」を表に出していない議員もいるといい、ギリギリまで駆け引きが続きそうだ。

ジャーナリスト/KOREA WAVE編集長

大阪市出身。毎日新聞入社後、大阪社会部、政治部、中国総局長などを経て、外信部デスクを最後に2020年独立。大阪社会部時代には府警捜査4課担当として暴力団や総会屋を取材。計9年の北京勤務時には北朝鮮関連の独自報道を手掛ける一方、中国政治・社会のトピックを現場で取材した。「音楽」という切り口で北朝鮮の独裁体制に迫った著書「『音楽狂』の国 将軍様とそのミュージシャンたち」は小学館ノンフィクション大賞最終候補作。

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