韓国大統領に内乱罪で逮捕状発付 尹氏側「捜査権ない」と主張
韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領による「非常戒厳」の宣布を巡り、ソウル西部地方裁判所は12月31日、内乱を首謀した容疑で尹氏への逮捕状を発付した。高官犯罪捜査庁(高捜庁)が30日未明、逮捕状を同地裁に請求していた。韓国の現職大統領の逮捕が認められるのは初めて。 【写真特集】過去にも逮捕、有罪相次ぐ… 主な歴代韓国大統領 高捜庁は逮捕状発付を受け、尹氏の逮捕を試みる。ただ、尹氏側は逮捕状発付に反発しており、尹氏の周囲を守る大統領警護庁が逮捕への協力を拒む可能性がある。韓国の通信社ニューシスによると警護庁は31日、令状執行に関連し「合法的な手続きによる警護措置を取る」とのコメントを出した。逮捕状の効力は1月6日までで、高捜庁は逮捕のタイミングを慎重に検討する。 大統領は憲法で不訴追特権が保障されているが、内乱罪は例外となっている。高捜庁は尹氏が3度にわたる出頭要請に応じなかったため、逮捕状請求に踏み切った。 尹氏の弁護団は31日、逮捕状が無効であることの確認を求める仮処分などを憲法裁判所に申請する方針だと明らかにした。弁護団は、高捜庁には内乱罪事件についての捜査権がないと主張している。 国会は12月14日、戒厳令の宣布は違憲だとして尹氏に対する弾劾訴追案を可決。尹氏は大統領の職務停止となった。だが、身辺警護などの特権は保持し、ソウル市内の高台にある大統領官邸で生活している。 高捜庁の報道官は31日午前「逮捕状は発付された以上執行が原則だ」と述べる一方で、逮捕の時期については「今の段階で言うことはない」と述べるにとどめた。 高捜庁は、逮捕を阻止しようとすれば公務執行妨害罪に当たる可能性があると警護庁をけん制している。ただし、警護庁側があくまでも抵抗した場合については「強制する方法がない」(大手紙「朝鮮日報」)との見方もある。 韓国メディアによると、過去には捜査当局が逮捕状を取りながら容疑者を逮捕できなかった例が複数ある。2004年には不正政治資金疑惑がある国会議員に対し検察が逮捕状を取ったが、関係者ら200人あまりが阻止。結局逮捕はできず、この国会議員は在宅で起訴された。 高捜庁は尹氏による戒厳令の宣布について「職権を乱用し、憲法秩序を乱す目的で暴動を起こした」疑いがあるとみている。検察は、戒厳令を尹氏に進言した金龍顕前国防相=12月27日に内乱罪などで起訴=と尹氏が共謀したとみている。【ソウル日下部元美】