時速194キロ「危険運転」事故、一審有罪でも検察が控訴の訳 #専門家のまとめ
2021年に大分市内の一般道で発生した時速194キロの車による死亡事故を巡る刑事裁判で、検察側が一審の有罪判決を不服として控訴しました。危険運転致死罪を認定した上で当時19歳だった元少年に懲役8年を言い渡したもので、過失運転致死罪にとどまると主張していた弁護側も控訴しています。これまでの経緯や検察側が控訴に至った理由を含め、理解の参考となる記事をまとめました。
ココがポイント
エキスパートの補足・見解
検察側は(1)「制御困難な高速度」に加え、(2)右折車を妨害する目的で危険な速度で接近した「妨害運転」にもあたるとして、二重の意味で危険運転致死罪が成立すると主張し、懲役12年を求刑していました。しかし、地裁は(1)を認めたものの、(2)を否定して懲役8年にとどめました。検察側は(2)を否定した「事実誤認」とそれを前提とした「法令違反」、刑期が軽すぎる「量刑不当」の3本立てで控訴しています。
一審が有罪でも控訴に至ったのは、遺族の懸命な署名活動による後押しに加え、いままさに法務省が危険運転致死傷罪の成立要件を緩和する方向で議論しており、今後の同種事件に対する刑事処分の指針となるような重要な判例になる事案といえるからでしょう。
元少年が書類送検され、在宅起訴にとどまっていた点も控訴に傾きやすい要因でした。もし勾留されているのに検察側が控訴したら、控訴日から控訴審判決前日までの勾留日数分を全て刑期から差し引く決まりとなっているからです。その分だけ実際に刑務所で服役する期間が短くなります。この事件の場合、控訴審判決がどうであれ、その点の心配はないというわけです。(了)