【問う 時速194km交通死亡事故】検察側と被告側が控訴 大分地検「妨害目的が認められず量刑不当」 弁護人は理由を明らかにせず
大分市で時速194キロで車を運転し、死亡事故を起こしたとして、被告の男(23)=同市=に危険運転致死罪で懲役8年を言い渡した大分地裁判決を不服として、検察側と被告側は12日、いずれも福岡高裁に控訴した。同日が控訴期限だった。法定速度を大幅に超える高速度事故にどのような刑罰を科すかの判断は、二審に委ねられる。 地裁は11月5日に初公判を開き、裁判員裁判で審理した。同28日の判決は、危険運転致死罪の対象となる「進行を制御することが困難な高速度」に該当すると認定した。一方で、検察側が主張したもう一つの要件である「妨害目的の運転」は成立を認めなかった。 大分地検の小山陽一郎次席検事は報道陣の取材に対し、▽妨害目的の不認定▽量刑不当―の2点を控訴の理由に挙げた。「法令の解釈・適用の誤りと事実誤認がある。妨害目的が認められなかったため、(求刑の懲役12年に対して)量刑が下げられた」と強調した。 遺族側は今月4日、「量刑があまりに軽い」と訴え、控訴するように要望する書面を地検に出していた。事故で弟を亡くした遺族の女性(59)は「検察が控訴して、安心した。福岡高裁が妨害目的も認めて、適切な量刑を判断することを強く願う」と話した。 地裁によると、被告側も控訴を申し立てた。弁護人は取材に応じず、理由を明らかにしていない。 一審で被告側は、従来の法解釈などから危険運転致死罪は成立せず、法定刑が懲役7年以下の過失運転致死罪を適用するべきだと訴えていた。二審で主張を変えなければ、「制御困難な高速度」の成立を含めて再び審理されることになる。 <メモ>事故は2021年2月9日午後11時過ぎ、大分市大在の県道(法定速度60キロ)で発生した。当時19歳だった被告の男は、乗用車を時速194キロで走らせ、交差点を右折してきた乗用車に激突。運転していた同市の男性会社員=当時(50)=を出血性ショックで死亡させた。大分地裁判決は、過失運転致死罪の適用を求めた被告側の主張を退け、「路面にわだち割れがあったと推認できる。わずかな操作ミスで事故を起こす実質的危険性があった」として危険運転致死罪の成立を認めた。