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西日本最大級のストリップ劇場を「公然わいせつ」で摘発 いまさら、なぜ? #専門家のまとめ

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:西村尚己/アフロ)

西日本最大級をうたう大阪・天満のストリップ劇場の経営者らが「公然わいせつ」の容疑で逮捕されました。ダンサーの女性が約60人の客の前で陰部を露出し、スタッフがライトで照らした上で客に撮影させていたとのことです。ただ、大阪府警によるストリップ劇場の摘発は12年ぶりであり、ネット上では「いまさら、なぜ?」という声も上がっています。ストリップ劇場を巡る法的問題を含め、理解の参考となる記事をまとめました。

ココがポイント

「付近の住民からは、劇場の存在に対して苦情が出ていたほか、客の1割ほどは外国人観光客で観光地化していた」
出典:ytv 2024/11/20(水)

「警察は外国人観光客の増加で、劇場が観光地化することへの懸念などから摘発に踏み切った」
出典:カンテレ 2024/11/20(水)

「1948年に広島市の劇場でストリップが摘発された事件では、『わいせつか芸術か』などを巡って最高裁まで争われた」
出典:読売新聞オンライン 2021/4/28(水)

「あるべき社会秩序や風紀は一体どんなもので、誰が決めるのか。表現や職業選択の自由よりも優先されるべきものなのか」
出典:弁護士ドットコムニュース 2021/6/5(土)

エキスパートの補足・見解

この劇場は1人4500円の入場料をとって年中無休で営業しており、1日約70万円、年約2億6千万円の売り上げがあったとみられています。しかも、客の1割が外国人観光客であり、観光地化していたようです。

こうしたストリップ劇場を巡っては、限られた空間に自ら好んで来ている客だけだから「公然」といえるのか、芸術の要素があり「わいせつ」といえるのかといった点が裁判で争われてきました。しかし、すでに判例は確立しており、不特定または多数の人の前でありさえすれば「公然」にあたるし、陰部を露出してポーズをとるなどすれば「わいせつ」にあたるとされています。とはいえ、公然わいせつ罪は罪が軽く、ほとんどが罰金で終わっています。

今回の摘発は来年の大阪・関西万博を控えた環境浄化作戦の一環にほかなりません。警察も公言しており、10月にも昔から売春が横行していた歓楽街「松島新地」の料亭が売春防止法違反で一斉摘発されています。接待営業を行うコンセプトカフェなどに対する風俗営業法違反での検挙も相次いでおり、しばらくはこうした状態が続くでしょう。いつどこの店が摘発されるかは「警察の胸三寸」という状態です。(了)

元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

元特捜部主任検事の被疑者ノート

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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