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昆虫の仰天擬態を暴く④=偽枯れ葉、正体見たり、アケビコノハ

天野和利時事通信社・昆虫記者
翅を閉じると枯れ葉、開くと派手な衣装のアケビコノハ

 アケビコノハの成虫が10月半ばに公園のベンチにとまっているのを見たことがある。その姿は、どう見ても、ベンチに張り付いた秋の落ち葉なので、だれも気付かずに、そばを通り過ぎていく。「フッフッフ、やつの存在に気付いているのは俺だけだ」と、昆虫記者は一人悦に入っていた。

 誰も見破れない擬態を見破った時は、自慢したくなるものだ。通りすがりのカップルに「これ何だか分かります?枯れ葉に見えるけど、アケビコノハって言いう蛾なんですよ」なとど話かけるが、無視される。

10月に公園のベンチにとまっていたアケビコノハ。
10月に公園のベンチにとまっていたアケビコノハ。

ベンチのアケビコノハを拡大してみても、やはり枯れ葉にしか見えない。
ベンチのアケビコノハを拡大してみても、やはり枯れ葉にしか見えない。

 「信じていないのだな」と思って、指で蛾を突っついて飛ばした。派手な黄色の下翅を見せて飛び去る大きな蛾。カップルは恐れおののいて、後ずさりし、変質者を見るような目で昆虫記者を睨み付けた。

 かように昆虫趣味は理解されがたいので、知識をひけらかしてはいけないという好例だ。それでも「これ枯れ葉じゃなくて蛾なんですよ」と言いたくなるほど、枯れ葉に似ているのがアケビコノハだ。枯れ葉擬態がばれた時に、パッと翅を広げて、鮮やかな色彩で敵を驚かせるのも、アケビコノハの戦術の1つと思われる。

アケビコノハの翅の裏側はこんなに派手。伊達巻を思わせるおいしそうな模様だ。
アケビコノハの翅の裏側はこんなに派手。伊達巻を思わせるおいしそうな模様だ。

枯れ葉にまぎれたアケビコノハ。矢印で示したが分かるだろうか。
枯れ葉にまぎれたアケビコノハ。矢印で示したが分かるだろうか。

枯れ葉かと思っていた物体が、突然鮮やかな色の下翅を見せて飛び去るとびっくりする。
枯れ葉かと思っていた物体が、突然鮮やかな色の下翅を見せて飛び去るとびっくりする。

アケビコノハの頭部には、変な角のようなものがある。枯れ葉の葉柄(ようへい)に見えないこともない。
アケビコノハの頭部には、変な角のようなものがある。枯れ葉の葉柄(ようへい)に見えないこともない。

 アケビコノハは成虫越冬するので、冬に軒下に隠れるようにじっとしている姿を見かけることもある。昆虫記者のように突っついたりせず、そっとしておくのがいい。そうすれば、春にアケビに卵を産み、あのかわいい目玉模様の幼虫がたくさん発生するかもしれない。(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

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