昆虫の仰天擬態を暴く④=偽枯れ葉、正体見たり、アケビコノハ
アケビコノハの成虫が10月半ばに公園のベンチにとまっているのを見たことがある。その姿は、どう見ても、ベンチに張り付いた秋の落ち葉なので、だれも気付かずに、そばを通り過ぎていく。「フッフッフ、やつの存在に気付いているのは俺だけだ」と、昆虫記者は一人悦に入っていた。
誰も見破れない擬態を見破った時は、自慢したくなるものだ。通りすがりのカップルに「これ何だか分かります?枯れ葉に見えるけど、アケビコノハって言いう蛾なんですよ」なとど話かけるが、無視される。
「信じていないのだな」と思って、指で蛾を突っついて飛ばした。派手な黄色の下翅を見せて飛び去る大きな蛾。カップルは恐れおののいて、後ずさりし、変質者を見るような目で昆虫記者を睨み付けた。
かように昆虫趣味は理解されがたいので、知識をひけらかしてはいけないという好例だ。それでも「これ枯れ葉じゃなくて蛾なんですよ」と言いたくなるほど、枯れ葉に似ているのがアケビコノハだ。枯れ葉擬態がばれた時に、パッと翅を広げて、鮮やかな色彩で敵を驚かせるのも、アケビコノハの戦術の1つと思われる。
アケビコノハは成虫越冬するので、冬に軒下に隠れるようにじっとしている姿を見かけることもある。昆虫記者のように突っついたりせず、そっとしておくのがいい。そうすれば、春にアケビに卵を産み、あのかわいい目玉模様の幼虫がたくさん発生するかもしれない。(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)