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近畿6校は順当か、それとも大逆転があるのか? 21世紀枠2校の行方は? センバツ選考会を占う(後編)

森本栄浩毎日放送アナウンサー
センバツ出場が決まり帽子を投げて喜びを爆発させる選手たち(過去の大会・筆者撮影)

 センバツ選考会が来週に迫った。今回は近畿以西の地区と、21世紀枠を取り上げ、展望を記したい。近畿は毎年のように難航し、しばしば波乱が起こっている。また1校減となった21世紀枠は、例年以上に魅力あるチームが顔を揃えた印象で、激戦が予想される。

近畿(6)

 4強に次ぐ強力投手陣の報徳

 大阪桐蔭が3連覇を果たし、レベルの高い近畿で異次元の強さを見せつけている。特に投手陣の厚みが今季の特長で、実績十分のエース・平嶋桂知(2年)に加え、大型右腕の森陽樹(1年)が台頭してきた。前チームから4番に座るラマル・ギービン・ラタナヤケ(2年)らが早めに援護できれば、森で逃げ切る勝ちパターンも。追いかける京都勢2校には好左腕がいる。京都外大西田中遥音(2年)は緩急が冴え、京都国際中崎琉生(2年)はキレのいい変化球を投げる。ともに制球力が素晴らしい。耐久(和歌山)は、エース・冷水孝輔(2年)の力投で4強に食い込んだ。創立170年を超える全国屈指の伝統校が、ついに甲子園デビューを果たすことになる。そして、残る8強組から浮上するのは報徳学園(兵庫)だろう。昨春のセンバツ準優勝に貢献した間木歩(2年=主将)と今朝丸裕喜(2年)の本格派右腕2枚が健在で、大阪桐蔭とも1点差の接戦だった。実力的には4強に勝るとも劣らない。

 最後の1枠は近江、須磨翔風、履正社の争いか

 最終枠を争う3校の比較は難しい。近江(滋賀)は、夏の甲子園でも好投したエース・西山恒誠(2年)に注目。興国(大阪)との近畿大会1回戦で76球完封を演じ、制球の良さは目を見張るものがある。得点力に課題は残るが、滋賀勢唯一の8強も追い風になるだろう。須磨翔楓(兵庫)は近畿大会初出場ながら、初戦で智弁学園(奈良)を破る殊勲の星をあげた。エース・槙野遥斗(2年)は走者を背負ってから粘れるのが強み。耐久戦は失策が失点に絡み敗れたが、内容的には遜色なかった。実力随一の大型チーム・履正社(大阪)は、京都外大西に序盤から大差をつけられ完敗した。この試合内容を覆すような材料をいかに見出せるかだろう。順当なら県1位も加味して近江。翔風が逆転するなら、強豪を倒した甲子園未経験の公立という優位性をどこまで強調できるか。今回の兵庫のように、同県で8強同時敗退(報徳が1位、翔風は2位)の場合、2校揃っての選出はあまり記憶にない。

中国(2)

 揺るぎない広陵と創志学園

 四国との「抱き合わせ枠」がなくなり、決勝進出が必須になった。ともに県1位で実力双璧とみられた広陵(広島)と創志学園(岡山)のワンツーとなり、両校の選出は間違いない。広陵は、前チームから活躍するエース・高尾響(2年)と只石貫太(2年=主将)のバッテリーが経験値で群を抜く。堀田昂佑(1年)も力をつけていて、強力右腕2枚は脅威。本大会でも優勝候補に挙がるだろう。創志は、東海大相模(神奈川)で春夏甲子園の優勝経験を持つ門馬敬治監督(54)が、就任2季目で早くも聖地に帰って来そう。左右両輪が安定し、果敢な走塁を見せるなど、攻守に洗練されている。高川学園、宇部鴻城の山口勢は大会を盛り上げたが、準決勝で完敗したのが惜しまれる。

四国(2)

 野球のまちに阿南光が明るい話題

 近年の四国で強さを見せる高知が、準決勝で同県ライバルの明徳義塾に勝ち、決勝でも阿南光(徳島)を破って3年連続のセンバツを確実にした。大舞台を経験した辻井翔大平悠真(ともに2年)の本格右腕がたくましく成長し、昨春(2勝)以上の成績をめざす。阿南光も準決勝で鳴門との同県対決を制し、決勝も高知と互角に渡り合った。エース・吉岡暖(2年)は、力強い直球を投げる。新野(あらたの)と阿南工が合併して6年前に誕生したが、新校名になって初のセンバツに、「野球のまち」阿南は盛り上がるだろう。

九州(4)                          

 4強を猛追する大分舞鶴

 いずれも県1位の4校が上位に顔を揃えた。例年は4強で決まることが多い。熊本国府は甲子園未経験ながら右腕・坂井理人、左腕・植田凰暉(ともに2年)の活躍で、強豪を連破した。この勢いを甲子園でも発揮したい。明豊(大分)は、左の好打者が多く、機動力が使える。伝統ともなった多彩な投手陣だが、本番までに柱が欲しい。夏の甲子園4強の神村学園(鹿児島)は、甲子園で打ちまくった上川床勇希(2年)ら野手陣がチームを引っ張るが、こちらも投手陣の底上げが課題になる。東海大福岡は打撃戦を制して4強入りしたが、明豊の継投策の前には完敗を喫した。準々決勝で熊本国府にタイブレークの末、逆転サヨナラ負けした大分舞鶴の猛追もあり、すんなり4強で決着するかどうか。大分舞鶴は、一昨年の21世紀枠での出場後も、力を伸ばし続けている。

21世紀枠(2)

 困難克服と文武両道の1校ずつか

 1校減って狭き門となった。従来の東西分けがなくなり、困難克服地域密着型と文武両道名門型に大別すれば、双方から1校ずつの選出か。前者では別海(北海道)の評判が高い。厳冬の酪農の町から、選手16人ながら北海道大会で4強入りし、北海にも終盤まで食い下がった。田辺(和歌山=近畿)は部員18人で市和歌山、智弁和歌山を連破し、近畿大会でも京都国際とタイブレークの死闘を演じた。いずれも「定員未満」での活躍で、地元に勇気を与えている。そして今回は、地域を代表するような進学校が候補に挙がっている。仙台一(宮城=東北)、水戸一(茨城=関東・東京)、鶴丸(鹿児島=九州)は、甲乙つけがたい。この枠は学校そのものの評価でもあるので、当日のプレゼンテーションが重要になる。震災禍の富山北部(北信越)、文武両道の岡山城東(中国)はともに甲子園で活躍した経験があり、ノーベル賞受賞者が卒業生にいる大洲(愛媛=四国)、私学ながら文武両道で力を伸ばす帝京大可児(岐阜=東海)も、それぞれに魅力は十分。1校減は惜しい気がする。

 選考会は26日の金曜日に行われ、タイトル写真のような喜びの光景が、全国各地で見られることだろう。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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