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スペインとポルトガル。イベリア半島の列強国が見せた好勝負。

森田泰史スポーツライター
ハットトリックを達成したC・ロナウド(写真:ロイター/アフロ)

ロシア・ワールドカップの最初の注目カードだった。前々回王者スペインと欧州王者ポルトガルが激突している。

過去35度対戦している両者だが、スペインが16勝13分け9敗と大きく勝ち越している。W杯での対戦は2度目となり、2010年の南アフリカ大会決勝トーナメント1回戦における前回の対戦はスペインが1-0で勝利した。

■中盤で数的優位を作ったスペイン

スペインにとって最悪の、ポルトガルにとって最高の立ち上がりだった。

3分にC・ロナウドがペナルティーエリア内でナチョに倒されてPKを獲得。これをC・ロナウドが沈めてポルトガルが先制した。

失点を喫したスペインだが、ポルトガルが引いて守りに入ったためにボール保持が容易になる。「ポゼッション・ハイ」とでも言うべきか、技術に優れた選手たちはボールを握ることで自信を取り戻していく。

スペインは4-1-4-1のシステムを選択した。肝となったのはコケのポジショニングだ。2列目に入ったコケが、状況に応じてポジションを下げ、ブスケッツとダブルボランチを形成する。さらに攻撃面では、ポルトガルの両センターバック(フォンテとペペ)とボランチ起用されたW・カルバーリョの間のスペースを突いた。イスコ、イニエスタ、D・シルバがポジションを変えながら中盤で数的優位を作る。

またジエゴ・コスタの活躍を忘れてはならない。2ゴールを記録しただけでなく、精力的に動き続けた。コスタがポストプレーで「的」になることで、ポルトガルのCBを固定させ、彼らの中盤のプレッシングへの参加を阻んだ。そして、スペインの前線からのプレスと先鋒となり、パスコースを狭めてポルトガルの攻撃方向を限定した。

■圧巻のC・ロナウド

ポルトガルはC・ロナウドが圧巻のパフォーマンスを見せた。PKとFK、ミドルシュートでハットトリックを達成している。

C・ロナウドはドイツ大会、南アフリカ大会、ブラジル大会、ロシア大会と4度のW杯で得点を記録している。ペレ(ブラジル)、ゼーラー(ドイツ)、クローゼ(ドイツ)といった偉大な選手に肩を並べた。加えて代表通算得点数を84得点に伸ばし、109得点を記録したアリ・ダエイ(イラン)に次いで歴代2位にランクインした。

ただ、気になるのはポルトガルがC・ロナウド頼りになってしまうところだ。2トップを組んだゲデスは所属するバレンシアで披露しているようなスピードと爆発力を示せなかった。スペイン戦では先行する展開だったとは言え、ポルトガルは余りにもカウンター一辺倒だった。

ロングボールとセットプレー。スペインは「らしくない」得点パターンでゴールをこじ開けた。対してポルトガルはエースの得点力が頼みの綱だった。今後の試合を占うなら、ポルトガルの戦い方は不安の残るものだ。

スペインとしては、この試合は分水嶺になり得た。ここで勝てば、ロペテギ前監督の解任騒動は収拾に向かう。逆に負ければ、メディアは監督交代の影響を書き立てるに違いなかったからだ。

ナチョのスーパーゴールで勝ち切りたかっただろうが、引き分けは悪くない結果だ。それはポルトガルも同様で、試合終了直後のC・ロナウドの雄叫びがそれを物語っていた。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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