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【渡邊雄太&パトリシオ・ガリーノ】大学時代に何度も話した代表での対戦が実現。次は東京五輪の舞台で…

青木崇Basketball Writer
試合後にお互いの健闘を称えて長いハグをした渡邊とガリーノ(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 2016年1月、Jスポーツの番組用でジョージ・ワシントン大へ取材に行った時、渡邊雄太とパトリシオ・ガリーノを一緒にインタビューしたことがある。2学年上のガリーノは、渡邊同様にアルゼンチンからの留学生ということに加え、代表に選ばれたことがある点でも共通していた。2人に対して「日本とアルゼンチンの代表としてワールドカップや五輪で戦えたらどう?」という質問をすると、2015年9月に行われたアメリカ大陸予選でリオ五輪出場権獲得に貢献していたガリーノは、笑顔で「そうなったら最高だね」と口にしたのを覚えている。

 あれから3年8か月、FIBAワールドカップに向けた準備試合とはいえ、東京五輪の会場となるさいたまスーパーアリーナで日本とアルゼンチン代表の対戦がついに実現。108対93でアルゼンチンが激しい点の取り合いを制したものの、試合早々から渡邊とガリーノはマッチアップし、お互いに持ち味を消そうとハードなディフェンスをやり合っていた。1万6000人を超える観客がワクワクした試合が終わる直前、最後のオフェンスで攻めずにドリブルしていた渡邊は、残り5秒のところでレフェリーが捕れるようにボールを手放すと、そばにいたガリーノとハグをした。

「ようやく実現したから、とてもハッピーな気分だ。この瞬間を長い間待ち望んでいたからね。試合前に雄太と話をしたよ。ジョージ・ワシントン大の卒業生、そして国を代表してプレーし、お互いがマッチアップできることを誇りに思えるとね。大学時代に僕たちはたくさん楽しい時間を過ごしてきたし、お互いに成長してきた。雄太がNBAで頑張っているシーンを見られることと、日本に来ることを僕はずっと楽しみにしていたんだ」

 渡邊との対戦が実現したことについてこう振り返ったガリーノは、出場時間28分59秒で3本の3Pシュートを含む11点、3リバウンド、2アシスト、1ブロックショットでアルゼンチンの勝利に貢献。スタッツには出てこないプレーだが、パスを弾くディフレクションやボールをもらえないようにするディナイの厳しさで、日本のオフェンスが遂行しにくい状況を何度も作り出していた。ジョージ・ワシントン大時代に3年連続でアトランティック10カンファレンスのオールディフェンシブチームに選ばれるなど、ガリーノが渡邊にとっていい見本だったことは、試合後のコメントでも明らかだ。

「パトとは2年間大学で本当に楽しい時間も苦しい時間も過ごしてきて、彼は人として尊敬できますし、またプレーヤーとしても僕はすごく尊敬している選手なので、今日チームメイトから敵チームとしてですけど、同じコートに立ってプレーできたというのがすごくうれしかったです。“自分たちの国の代表としてまた一緒に同じコートに立てたらいいね”というのはずっと大学の時から言っていたので、パトとずっと長い時間マッチアップできていましたし、個人的には本当に最高な時間でした。

 本当にすごくいいディフェンダーで、彼がいる時ジョージ・ワシントンのエースストッパーは彼だったんですけど、今日もなかなか自分が欲しいところでなかなかボールがもらえずに、苦しい展開になったりしたんですけども…。彼のディフェンスをずっと見て僕も大学で最初の2年間育っていきましたし、抜けた後は僕が彼の後釜というか、そういったエースストッパーとしてやってきたので、彼と今日同じコートで対戦できたのは光栄に思います」

 ガリーノは4年前にリオデジャネイロで五輪の舞台を経験。しかし、来年夏にさいたまスーパーアリーナで国の威信をかけた真剣勝負で渡邊とのマッチアップを実現するためには、キャリア初となるFIBAワールドカップで結果を出さなければならない。アルゼンチンは目標達成を成し遂げるために準備にかなりの時間をかけており、ガリーノも中国で成果と出そうと意欲満々だ。

「ワールドカップでの目標は五輪の出場権獲得だ。僕たちにとってはハードな道のりになる。アメリカ大陸から出場した国の中で上位2チームに入らなければならないからね。厳しい戦いが待ち構えているけど、今日の経験は本当に素晴らしいものだった。来年また戻ってくることができたら、もっと素晴らしいものになるだろう。

 チームが集結してかなりの時間が経過したけど、ここまではうまく行っているよ。キャンプの後にパンアメリカンゲーム、フランス、日本、そして中国で試合をするなど、入念な準備は僕たちにとってプラス。ワールドカップは選手3〜4人とヘッドコーチしか経験していないから、チームの大半にとっては新たな経験だ。これはお互いを心地よく思える環境、コート上での何をするかと行った理解度を上げる点で、ヨーロッパや日本、中国での試合はすごく重要になる」

 ジョージ・ワシントン大のキャンパスがあるフォギー・ボトムでの出会いから5年、2019年8月22日の夜にさいたまスーパーアリーナで過ごした時間は、渡邊とガリーノにとって一生忘れることのない思い出になっただろう。しかし、大学時代に語り合った大きな夢は東京五輪で対決すること。それを実現させる絶好の機会ということからも、FIBAワールドカップは日本やNBA選手で構成されるアメリカだけでなく、ガリーノがいるアルゼンチンも注目チームの一つとしてお勧めする。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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