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「スポーツと寄付」の新しい時代が始まる。岡田武史氏や長友佑都氏などレジェンドがドリームチームを結成!

上野直彦AGI Creative Labo株式会社 CEO
岡田武史氏の呼びかけに集まったトップアスリート達(提供NPO法人deleteC)

岡田武史氏の呼びかけに集まったスポーツ界のレジェンドたち

 今もコロナ禍で苦しんでいるスポーツやスポーツビジネスの世界。

 東京オリンピック・パラリンピックの開催についても、組織委員会や関係者が出場を目指すアスリートと同じくらい全力でのぞんでいる。その向こうにはきっと「光」があるはずだ。

 このコロナ禍で東京オリパラだけではなく日本のスポーツ界を取り巻く環境は大きく変化した。一番の変化は、おそらくスポーツとお金の関係ではないだろうか。クラウドファンディング、ギフティング(投げ銭)、スポーツトークン…様々な取組みが昨年から実施されているが、ここに新たな挑戦が始まる。「スポーツ×寄付」の新時代を象徴するプロジェクトである。

 牽引するのはサッカー元日本代表監督で現在はFC今治運営会社「株式会社今治.夢スポーツ」代表取締役である、岡田武史氏(64)。岡田氏の呼びかけのもと、スポーツ界の錚々たるメンバーが、まるで同志が呼応するかのように集った。

動き出したサッカー界、「がん治療研究の応援のために」

監督時代と同じで今回も岡田武史氏の動きは速かった。(提供:NPO法人deleteC(デリート・シー))
監督時代と同じで今回も岡田武史氏の動きは速かった。(提供:NPO法人deleteC(デリート・シー))

 まず、日本のサッカー界を代表するレジェンドたちが大集結した。この新しい挑戦のために「ドリームチーム」を特別に結成したのだ。

 賛同したのは、長友佑都氏、井原正巳氏、岩政大樹氏、中田英寿氏、内田篤人氏、小野伸二氏、北澤豪氏。その名も「がん治療研究を応援するドリームチーム」。来月2月4日のワールドキャンサーデーに先駆け、本日2021年1月29日(金)正午から2月4日まで、チャリティオークション「HOPEオークション2021」を開催、特別に制作したドリームチームのユニフォームを出品するほか、サッカー界またラグビー界を代表するアスリート総勢15名が本人たちのお宝ともいえるアイテムを惜しげもなく出品する予定だという。

普通の暮らしのなかで、誰もが、すぐに、応援できる取り組み

 これら仕組みの仕掛人はNPO法人deleteC(デリート・シー)だ。

 deleteCは「みんなの力で、がんを治せる病気にする」ことを目指して、「ふだんの暮らしの中で、誰もが、がん治療研究を応援できるしくみ」をつくる活動を行っている。

 ちなみに団体名の由来だが、deleteCの頭文字の「C」はCancerの頭文字を意味し、まさにこの世界からがんをなくそうというミッションからだ。仕組みはいたってシンプルで、参加する企業や個人などがブランドロゴや商品名からCancerの頭文字である「C」の文字を消したり(delete=消す)、deleteCのロゴを使うなどし、商品・サービスを販売すると、購入金額の一部がdeleteCを通じて医療者が推進するがん治療研究へ寄付されるというものだ。

各社・各団体の動きも速い。C.C.レモンから「C」が消えた商品数百万本が販売、ラグビートップリーグの試合で「deleteCマッチ」と冠されたスペシャルマッチが開催。(提供 NPO法人deleteC)
各社・各団体の動きも速い。C.C.レモンから「C」が消えた商品数百万本が販売、ラグビートップリーグの試合で「deleteCマッチ」と冠されたスペシャルマッチが開催。(提供 NPO法人deleteC)

 すでに各社・各団体が動いている。

 これまでには、C.C.レモンからCが消えた商品数百万本が販売されたり、ラグビートップリーグの試合で「deleteCマッチ」と冠されたスペシャルマッチが行われたりした。三菱重工相模原ダイナボアーズの田中伸弥氏は大学時代に発症したガンを克服して現在もプレーを続けており、ラグビーへの熱い思いが闘病生活の、そして復帰までの支えになったことを明かし、患者さんへ向けたメッセージを送った。ほかにも、2020年1月、大腸がんを克服した阪神タイガースの原口文仁氏が、自身の主催するチャリティーリレーマラソンに参加し、参加費の一部をdeleteCの応援するがん治療研究に寄付している。

 そもそもこのdeleteCのアイデアが生まれたのは、中島ナオさん(現・deleteC共同代表理事)が、2018年11月に、友人の小国士朗さん(現・deleteC共同代表理事)に「本気でがんを治せる病気にしたい」と相談したことから始まった。彼女は31歳の時に乳がんが見つかり、その後転移して、がんのステージ4の状態で2年近く治療を続けていた。

 「どうしたらいいか」と2人で話すなかで、中島さんが手にしていた「Cancer」に赤い線が引いてある1枚の名刺をきっかけに小国さんが「企業にCを消した商品を売ってもらい、売り上げの一部が自動的にがん治療研究に寄付される」という仕組みを思いついた。そこから何十もの企業や医師と対話を重ねるなかで、賛同者が一人、また一人と現れはじめたのだ。

岡田氏は訴える、「コロナ禍でスポーツの価値が問われている」と。

 今回、がんを治せる病気にする日を1日も早く手繰り寄せたいという彼らの思いに、岡田氏をはじめ総勢15名の日本を代表するトップアスリートや指導者が賛同している。

 岡田氏はこう語ってくれた。

「このコロナ禍の中でスポーツの価値が問われています。スポーツには人を笑顔にしたり、夢や勇気を与えたり、数字では表せない価値があります。それはお金など数字で表せる価値と共に人が生きていくうえでなくてはならないものです。そういう価値があることを我々はしっかり認識して、その価値をもって社会課題に取り組まなければならない使命があると思っています。この度少しでも癌で苦しむ人を少なくするお手伝いができればと

参加させていただきました」

 そうコメントする目線の先は常に未来を見つめている。時に日本サッカー界の未来を、時に地方の再生を、そして現在は今回の取り組みである「スポーツ×寄付」によるがん治療支援の未来をである。

コロナ禍だからこそ、がん治療研究を応援することの意味と意義

 日本で2人に1人は、いつかなる可能性があると言われるがん。がんを治せる病気にするためには、研究開発が重要だ。しかし現実的には日本のがん研究は深刻な資金不足がある。たとえば、日米で比較するとがん研究にあてられている国の予算は約20倍も差がある。20倍である。人口比が約3倍を差し引いても比べものにないくらの大きな違いだ。

 しかし、現在がん研究者や医師から「コロナ禍の影響を受けて、研究が進んでいない」「検査や研究にも、使う物品は世界中で需要が爆発しており手に入らない」といった声がdeleteCに多数寄せられている。このような状況だからこそ、がん治療研究という希望の種を応援したい。そんな想いを込めて、公募から選ばれたがん治療研究に寄付金を届けるイベント「deleteC 2021 -HOPE-」が1月30日(土)に開催することになった。

 さらに、”誰もが”がんやがん治療研究への寄付の機会に触れられる入り口をつくるために、スポーツやアスリートの力をお借りしたい。そう考えるなかで、アスリートによる社会貢献活動を促進することで、社会課題の解決を加速させ、ソーシャルイノベーションの輪を広げていく「HEROs Sportsmanship for the future」プロジェクトを実施している日本財団の協力を受けて、「HOPEオークション2021」を開催することになった。

(提供:NPO法人deleteC)
(提供:NPO法人deleteC)

次々と立ち上がるアスリートたち、スポーツ界のリーダーたち

Jリーグやタイリーグで活躍した岩政大樹氏。いまもファン・サポーターから熱烈に支持されている存在だ。(提供NPO法人deleteC)
Jリーグやタイリーグで活躍した岩政大樹氏。いまもファン・サポーターから熱烈に支持されている存在だ。(提供NPO法人deleteC)

 今回の「HOPE オークション 2021」には、長友佑都氏の直筆サイン入り日本代表レプリカユニフォームや、井原正巳氏の直筆サイン入りの日本代表の際に実際に着用したユニフォームをはじめ、アスリートたちから「希望」が込められた直筆サイン入りのユニフォームやスパイクなどのアイテムが寄せられている。

 また、岩政大樹氏からは本人が着用した2010年日本代表ユニフォームが届いている。岩政氏は、こう語ってくれた。

「私も気がつけば"アラフォー"です。可愛い娘ができ、両親は歳をとり、祖父母は癌で亡くなりました。私たちの命が未来へと繋げていくものであるなら、私は私で、未来のために自分にできることをしていきたい。そこで、今回は微力ではありますが、このオークションに参加させていただきました。W杯南アフリカ大会のデンマーク戦のユニフォームです。試合には出られませんでしたが、私の選手キャリアの一つの到達点でした。しかし、今はもう手元にある必要はありません。ぜひ!!」

ラグビー界からも多くの選手が支援

中村亮土氏の応援は競技の垣根を越え、このムーブメントの広がりを感じさせる。(提供NPO法人deleteC)
中村亮土氏の応援は競技の垣根を越え、このムーブメントの広がりを感じさせる。(提供NPO法人deleteC)

 この取り組み、サッカー界だけでなくラグビー界からも、山田章仁氏、クリスチャン・リアリーファノ氏、グレイグ・レイドロー氏、中村亮土氏、岸岡智樹氏、藤田慶和氏、木村貴大氏が賛同して今回のオークションに参加している。

サントリーサンゴリアスの中村亮士氏は、こう語ってくれた。

「トーナメント中のトレーニングの時や、トレーニングへの移動の際に使用したもので、

台風で開催が危ぶまれた、スコットランド戦の試合開催の判断を待っている時にも着用していました。台風という逆境を乗り越えて、試合の開催に向けて尽力してくださった多くの方々への感謝と、決勝トーナメント進出に向けての思いがつまった日本代表のヤッケなんです 」

アーティストのAIさんも応援! オンラインイベントでの熱唱に期待

AIさんの参加も大きな意味がある。(提供NPO法人deleteC)
AIさんの参加も大きな意味がある。(提供NPO法人deleteC)

 deleteCは、1月30日(土)17:00よりオンラインイベント「deleteC 2021 -HOPE-」(参加費無料、予約不要)を開催、岡田氏がリモートで出演する。deleteCの寄付先となる2つのがん治療研究を発表するほか、アーティストのAI さんがライブで新曲「HOPE」を初お披露目して、新しい寄付のカタチ「いいねの募金」(「Yahoo!ネット募金」の特設サイト )の取り組みを発表する予定となっている。

 スポーツ界だけでなく、アーティストの世界からも支援が始まっている。この大きなうねりは次世代の波を呼び起こすことになりそうだ。

こんな時代だからこそ、一歩踏み出したい

 最後にdeleteC代表理事である中島ナオ氏と小国士朗氏が語ってくれた。

「今回、競技の枠を超えて、日本を代表するスーパースターたちが次々に立ち上がり、想いのこもったアイテムを出品してくださいました。あの激闘をくぐりぬけたユニホーム、グランドを駆け抜けたスパイク、一筆一筆に気持ちの入った『みんなの力で、がんを治せる病気に』のコメント入りの写真。ひとつひとつのアイテムがdeleteC事務局に届くたびに、私たちは『これって夢なのかな…』と思ってしまいました」と中島氏が語る。

 小国氏はこうも話してくれた。

「まだまだ日本において、がんの治療研究の応援は身近な存在とは言えない状況です。でも、この夢のような、希望にあふれるひとつひとつのアイテムが、がん治療研究との距離をぐっと近づけてくれると考えています。実質2か月あまりの短い準備期間であったにもかかわらず、これほどまでにワクワクするプロジェクトが実現できたのも、日本財団様、選手のみなさま、モバオク様の情熱のおかげです。ぜひ一人でも多くの方に、この新しいがん治療研究の応援の形に参加していただければ幸いです」

 日本はがん発症の多い国だ。「自分に何ができるのだろう」と足がすくんでしまいそうな大きな問題だが、「だからこそ、今から始め、1つでも多くのアクションが集まって行けば必ず『がんを治せる病気にする未来』を手繰り寄せることにつながる」とふたりは笑顔で言う。一人でも多くの「応援」が集まり、「希望」の光となることを願っている。

 こんな時代だからこそ、一歩踏み出したい。

そう思わせる、スポーツ界からの、アーティスト界からの、新しい挑戦である。

(了)

AGI Creative Labo株式会社 CEO

兵庫県生まれ/スポーツジャーナリスト/ブロックチェーンビジネス/小学生の頃に故・水島新司先生の影響を受けて南海時代から根っからのホークスファン/野村克也/居酒屋あぶさん/マンチェスターシティ/漫画原作/早稲田大学スポーツビジネス研究所 招聘研究員/トヨタブロックチェーンラボ/SBI VC Trade・Gaudiyクリエイティブディレクター/CBDC/漫画『アオアシ』取材・原案協力/『スポーツビジネスの未来 2021ー2030』(日経BP)異例の重版/NewsPicks「ビジネスはJリーグを救えるか?」連載/趣味 フルマラソン、ゴルフ、NYのBAR巡り /Twitter @Nao_Ueno

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