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年収400万円の25歳が「給料安い」と転職して年収100万円ダウンした悲しい理由

横山信弘経営コラムニスト
もっと給料を高くしたいな……(写真:イメージマート)

「今の給料は安すぎるのではないか?」

そういう気持ちに囚われ、転職を考える人は少なくない。

友人がSNSに投稿する「給料アップ成功!」という話を見れば、自分ももっともらっていいはずだ、と感じるだろう。とくに若い人や、家計を預かる主婦などは、給料水準が将来の生活に直結するだけに、「もう少し条件のいいところへ行きたい」と思うのも自然なこと。

しかし焦って転職し、逆に年収がダウンしてしまうケースもある。

今回は、年収400万円の25歳が「給料安い」と嘆いて転職し、結果的に年収100万円ダウンしてしまった理由について解説する。転職を考えるすべてのビジネスパーソンはもちろんのこと、新入社員にも、ぜひ最後まで読んでもらいたい。

■「給料安い」だけでは判断基準が甘くなる

まず注目したいのは、「給料安い」と感じたとき、その思考がどのように転職への決断につながるのかである。

実際に年収400万円だった25歳のAさんは、会社の先輩が年収500万円だと聞き、「自分ももっともらうべきだ」と思うようになった。しかし「年収500万円」や「月収30万円以上」など、具体的な数字を明確に考えたわけではない。漠然と「今より高ければいい」と思っていただけ。

このような「比較形容詞」を多用する思考は危険だ。

もともと「安い」「高い」といった曖昧な表現には、人を錯覚させる力がある。

数万円上がっただけで「やった、給料アップだ」と喜んでしまうが、後々よく確認したら、ボーナスや諸手当の条件が今の会社より悪く、トータルで大幅なマイナスになることもある。Aさんはまさにこの落とし穴にはまった。

■なぜ転職して年収ダウンしたのか?

Aさんが最初の会社を辞めた理由は単純だった。「こんなに頑張っているのに年収400万円は安い」と思い込み、より高い給料を期待して転職活動を始めた。

だが、転職先が決まった後で提示された年収を詳しく見ず、「前職より少しでも高ければよい」と考えてしまった。

ところが入社して初めて、残業代が固定残業手当に含まれていたり、手当の諸条件が変わっていたりと、実質的には年収300万円しか得られない仕組みだったことに気づいたという。

「給料安い」と感じたとき、なぜその額を「安い」と思ったのか、冷静に数値で検討する必要がある。

Aさんは転職エージェントから「あなたの実績なら、今の会社より条件のいいところに行けるはずだ」と甘い言葉をささやかれ、信じ込んでしまった。

転職エージェントの営業は、キャリアの相談をすることではなく、相手を転職させることで報酬が入る。この点はしっかりと押さえておこう。

結局このAさんは、業界の仕組みや給料形態、昇給の見通しなどをチェックしていなかった。数字をしっかり押さえないまま転職を決めると、結果がダウンしてしまうことも十分にあり得る。

■「比較」の落とし穴に要注意

「給料が安いから転職する」は一見シンプルだが、裏を返せば「今より高ければいい」というとても曖昧な基準だけで動いてしまう可能性が高い。商品の値段交渉で「もっと安くして」と繰り返す人が、かえって相手の心理戦術にはまりやすいのと同じである。

たとえばAさんが年収400万円から500万円へのアップを明確に目指していたなら、採用面接の段階で「御社の支給体系はどうなっていますか? 手当の内訳は?」などと具体的に質問したはずだ。

だが彼の頭には「ちょっとでも上がれば十分」という思いしかなかった。

こうした姿勢は交渉をする側から見ればとても扱いやすい。結果として書面にしっかり目を通さないまま「入社後に気づく」最悪のパターンを招くのだ。

だから「比較形容詞」を日ごろから多用するのは、よくないのだ。

「もっと給料を高くしたい」

「もっとスキルをアップしたい」

「もっと労働時間を減らしたい」

といった表現をしていると、成果が出づらい。ゴールイメージが明確ではないからだ。

<参考記事>

目標の「5つの型」ごとの達成プロセスと進捗管理のコツとは?(スライド5枚)

■具体的な目標設定で不満を正確に把握する

給料に限らず、何かに不満を覚えたら、まず自分がどの程度を望んでいるのかを設定することが大切だ。

たとえば年収500万円が目標なら、現状の収入とのギャップを数値で捉える。Aさんの場合だと「あと100万円アップが必要」とはっきりわかるので、社内交渉で昇給を狙うのか、転職するならどのような企業や業界が妥当かを調べればいい。

いっぽう「今より上」を目指すだけでは、ほんの数十万円の上乗せで満足するかもしれない。だが、それが本当に望んだ給料額かどうかは不透明だ。

■給料以外にも注目すべきポイント

しかも転職は給料だけでなく、待遇の総合面をチェックすべきである。

残業時間、休日出勤の有無、福利厚生、昇給やボーナスの仕組み、通勤手当など、注意すべきパラメーターは多い。

給料が少々高くても、休日出勤が常態化している会社だったり、残業代が固定で割に合わなかったりすると、結果的に時給換算で見れば今より低いケースもある。

Aさんも実際に転職後、長時間労働で疲弊し、年収そのものも300万円に落ち込み、心身ともにダメージを負ったという。

「年収400万円の25歳が給料安いと転職して年収100万円ダウン」――この出来事から学べるのは、給料を数値で把握し、目標を定めないまま動くリスクだ。

焦りや曖昧な期待だけで転職に踏み切ると、結局は前より悪い条件を受け入れる結果になる可能性が高い。

転職のみならず、仕事で成果を出すときもすべて正しい「現状認識」からスタートさせなければいけない。そして、どこをゴールにするのかもハッキリさせる。こういったことを怠ると、どんなに「もっと高く」「より多く」と比較形容詞で考えてもキリがなくなるのだ。

<参考となる動画>

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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