なぜバルサは“選手登録”を行えたのか?レヴァンドフスキ、ラフィーニャ、デンベレ…新戦力と整った舞台。
最悪の事態は、避けられた。
現地時間13日に行われたリーガエスパニョーラ開幕節で、バルセロナはラージョ・バジェカーノと対戦した。結果はスコアレスドローだった。
ただ、この試合前に注目されていたのは、戦術の攻防ではなかった。バルセロナが選手登録を行えるかどうか、という問題だった。
■バルセロナの大型補強
バルセロナは今夏、大型補強を行った。ロベルト・レヴァンドフスキ 、アンドレアス・クリステンセン、フランク・ケシエ、ジュール・クンデ、ラフィーニャらを獲得。1億5300万ユーロ(約214億円)を補強に投じた。
だが新加入の選手たちと、契約延長を行ったセルジ・ロベルト、ウスマン・デンベレの選手登録を開幕直前まで行えずにいた。
そのような状況で、バルセロナは「第四のレバー」を動かした。テレビ放映権25%の25年間にわたる譲渡、『バルサ・スタディオ』の24.5%の売却で、すでに「第三のレバー」まで動かしていた。
そして、「第四のレバー」が登場した。バルセロナは『バルサ・スタディオ』の24.5%をオルフェウス・メディアに売却。代わりに1億ユーロ(約140億円)の資金を得た。
4つのレバーを動かして、バルセロナはクンデ以外の全選手の登録を可能にしたのである。
資産を切り売りした、という側面はある。それが正しかったかどうか、答えは未来にしか分からない。
■強豪とのタイトル争い
バルセロナが最後にリーガで優勝したのは、2018−19シーズンだ。この2シーズンは、アトレティコ・マドリー、レアル・マドリーに優勝を譲っている。
アトレティコとマドリーは、共に2022−23シーズンに向けて適した補強を行い、チームビルディングに注力してきた。
アトレティコはアクセル・ヴィツェル、ナウヘル・モリーナを獲得した。
昨シーズンは、3バックでいくのか、4バックでいくのか、システムひとつ取っても、ディエゴ・シメオネ監督に迷いが見られていた。だが今シーズンはヴィツェルを5バックの中央に据える布陣を固めてきている。アントワーヌ・グリーズマン、ジョアン・フェリックスといった昨シーズンの主力組に加え、アルバロ・モラタやサウール・ニゲスのレンタルバックがあり、戦力は充実している。
マドリーは、ディフェンディングチャンピオンとして、新たなシーズンに臨む。キリアン・エムバペ(パリ・サンジェルマン)の獲得に失敗したものの、裏を返せば、高額な年俸を含め出費を抑えられた。移籍金8000万ユーロ(約112億円)で獲得したオウリエン・チュアメニ、チェルシーとの契約が満了してフリートランスファーで加入したアントニオ・リュディガーを加え、チームの強化を図った。
カリム・ベンゼマ、ヴィニシウス・ジュニオールのコンビは健在で、カゼミーロ、トニ・クロース、ルカ・モドリッチの「盤石の中盤」に、最後の砦として守護神ティボ・クルトゥワが控えている。今季のリーガで、優勝に最も近いのは、やはりマドリーだろう。
■整った舞台
いずれにせよ、舞台は整った。
バルセロナはここから、タイトル獲得に集中する。簡単なシーズンにはならないだろう。だがバルセロニスタは希望を抱いている。
新加入の選手には即戦力級の活躍が求められる。クリステンセンとクンデには最終ラインの統率とビルドアップの向上、ケシエにはフィジカルの注入、レヴァンドフスキとラフィーニャにはゴールに直結するようなプレーだ。
ガビ、ペドリ・ゴンサレス、セルヒオ・ブスケッツの存在で、ポゼッションを主体とするスタイルは崩されない。加えてシャビ・エルナンデス監督が要求するのはボールロスト後のプレッシングだ。「即時奪回」をアイデンティティーに、ひとつのチームが作り上げられようとしている。
「私は失望している。だが、まだ始まったばかりだ。ベストな状態でスタートさせることはできなかった。我々の最高の試合ではなかった。難しく、タフなゲームだった」とはラージョに引き分けた後のシャビ監督のコメントだ。
「我々はフリーの選手を見つけられなかった。もっと素早くボールを動かす必要があった。それができていた時は、ゴール前まで行けていた」
「期待は大きかった。我々の予想を少し上回っていたかもしれない。しかし、それは言い訳にならない。期待はないより、当然、ある方がいい。何かを説明するなら、そういうことになる。プレーの内容が物足りないものだったし、ラストパスやフィニッシュのところで落ち着きが欠けていた。選手たちに対しては、プレッシャーは私のものだと言ったけれどね」
かくして、賽は投げられた。
もう、後戻りはできない。前だけを見据えて、シャビ・バルサは出発している。