イスラム組織ハマス、パラグライダーを使用してイスラエル国境を突破 世界初の実戦での軍事利用か
パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスは10月7日、パラグライダーを使用しての奇襲攻撃でイスラエルの国境を突破した。英軍事週刊誌ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリーによると、パラグライダーが実戦で使用されたのは知られている限りで世界で初めて。
ハマス戦闘員は、ガザ地区とイスラエルの国境沿いでの広範な攻撃の一環として、2人乗りと1人乗りの両方のパラグライダーを飛行させてイスラエルの治安部隊を攻撃した。
ネット上に投稿されたハマスのビデオには、複数の動力付きパラグライダーが攻撃に使用されている様子が映されていた。これは、ハマスを含むパレスチナ解放を目指すイスラム組織にとって初めてだけでなく、世界的に知られている限りで初の軍事利用とみられる。
2人乗りのパラグライダーは座席のある3輪車の構成で、後部乗員が機体を操縦し、武装した前部乗員が迅速に降機して地上で攻撃できるように配置設計されていた。一方、1人乗りパラグライダーは、エンジンとプロペラをパイロットの背中に直接取り付ける構造だった。
パラグライダーは速度が遅く騒音が大きいものの、カバーする距離が比較的短かったため、イスラエル側に効果的な対抗策を取られるほど長く、イスラエルの国境防衛にさらされることはなかったとみられる。また、パラグライダーを使った初めての実戦利用だったため、イスラエル軍もパラグライダーの軍事利用の性質をよく理解できず、対応に間に合わなかった可能性が高い。
ただし、実戦で世界初とみられる電動パラグライダーの使用も、まったく驚くべきことではない。1987年11月にはパレスチナ過激派がハンググライダーでイスラエル北部と南レバノンの国境を突破し、「グライダーの夜」と呼ばれる事件が起きた。この事件でイスラエル兵6人が死亡、8人が負傷した。
電動パラグライダーによる攻撃の可能性については、2014年7月にイスラエル国防軍が報告書を発表し、その中でハマスの工作員がパラグライダーの訓練のためにマレーシアに派遣されたことを明かした。報告書は「計画はイスラエルにパラシュートで降下し、民間人を誘拐し殺害するものだった」と述べた。
●北朝鮮、パラグライダー使った奇襲訓練実施
さらに、北朝鮮も軍特殊部隊が2017年9月中旬にパラグライダーでソウルの米韓連合軍司令部に侵入し、制圧する奇襲訓練を初めて実施したと報じられた。北朝鮮メディアの朝鮮中央通信(KCNA)は2016年4月9日、朝鮮の文化遺産の中に、世界初のグライダーと称されるピゴ(空飛ぶ乗り物)があり、1592~1598年の「壬辰祖国戦争」(日本での呼び名は文禄・慶長の役)の初期に、韓国南部の全州地域に住むユン・タルギュによって軍事通信用に発明されたと報じた。
パラグライダーは非常に安価で、入手や組み立て、操作が簡単であるため、準備の整っていない地上からでも飛行でき、ほとんどの地上レーダーのカバー範囲の下で飛行できるという利点がある。技術の発展に伴い、近年、安価な市販の軍用ドローンの使用が拡大しているのと同じように、近い将来、パラグライダーやその他の破壊的な非対称戦争手段が急増すると予想される。
(関連記事)
●中国最大の航空ショー、新たな極超音速ドローン「MD22」公開