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世界初の核パルスエンジンを開発した「オリオン計画」核爆発を繰り返し発生させるエンジンの性能とは?

オリオン計画により構想された宇宙船 出典:Wikipedia

核爆発を繰り返し発生させて前進する「核パルスエンジン」想像しただけで身の毛もよだつようなアイデアですが、実際に宇宙飛行に使うため開発が進められていたことをご存知でしょうか。本記事では、「オリオン計画」をご紹介します。

■核爆発を繰り返し発生させるエンジン

核パルスエンジンによる惑星間移動のイメージ 出典:Wikipedia
核パルスエンジンによる惑星間移動のイメージ 出典:Wikipedia

核パルスエンジンとは、宇宙船のエンジン後方で核爆発を繰り返し発生させ、その衝撃で推進するロケットのことです。原爆を使用する場合は核分裂パルスエンジン、水爆を使用する場合は核融合パルス推進と分類されています。

まるでSFのような推進方法ですが、実は過去に研究が行われていました。オリオン計画は、アメリカにて1950年代 - 60年代にかけて行われた研究で、世界で最初の核パルスエンジンを搭載した宇宙船の計画です。

オリオン計画では、核分裂または核融合による爆弾を宇宙船から後部に放出し、約60m離れたところで爆発させ、鋼鉄かアルミニウムの板で爆発の衝撃を受けて進むことが考えられていました。すごい発想ですね、決して乗りたくはないかもしれません。原子力を使用することにより、大きい推力と高い噴射速度の両方を実現する見込みでした。

■実際に開発された試作核パルスエンジン「Hot Rod」

試作核パルスエンジン「Hot Rod」出典:National Air and Space Museum
試作核パルスエンジン「Hot Rod」出典:National Air and Space Museum

オリオン計画の初期には小型模型も開発されており、大きさ約1mで、質量は約100kg、名称は「Hot Rod」と名付けられました。Hot Rodの実験では、通常の火薬による爆発でパルス推進を実際に行った実験の動画が残されています。

オリオンの性能の見積もりは素晴らしく、一度のミッションで大規模で恒久的な月面基地を構築することも可能と言われていました。また、オリオンは1年のうちに地球から冥王星に到達し、戻ってくることができるとも言われていました。交換留学の感覚で冥王星まで旅行に行けそうです。

■ぶっ飛んだ恒星間移動のアイデアが急浮上

核パルスエンジンによる惑星間移動のイメージ 出典:Wikipedia
核パルスエンジンによる惑星間移動のイメージ 出典:Wikipedia

そして、このオリオン型の宇宙船は、恒星間宇宙船にも適用するアイデアが出てきていました。ペイロードはなんと2万トン、数百人から成る小さな町を充分に維持できるほどです。機体は非常に大きく、全質量は1個約1トンの核爆弾30万個の燃料込みで、40万トンほどになります。爆弾は3秒ごとに爆発させられ、宇宙船を1Gで10日間加速し、光速の30分の1である秒速1万kmに到達すると見込まれていました。この速度でオリオン型恒星間宇宙船はアルファ・ケンタウリに140年で到着が可能です。

しかし、ここまで高速に移動していると、目的地に着いた時の減速はどのように行うのでしょうか。この宇宙船には、目的地に到着した後ブレーキができるよう、2段式に設計することが考えられていたようです。色々と課題はあるかと思いますが、現在の科学技術で恒星間を移動するには、最も現実的な輸送形態と考えられています。しかし残念ながら、1963年に部分的核実験禁止条約が結ばれたことにより、オリオン計画はその影響を受け終わりを迎えました。

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