脳卒中や心筋梗塞のリスクが低い人たちの「歯磨き習慣」が明らかに。日本人1600名解析【最新論文】
日本でがんの次に多い死因は「心臓血管系疾患」。
今、日本人で最も多い死因は「がん」。2022年の統計では年間39万人近くががんで亡くなっています。そしてその次に多いのが、心臓や脳などの病気である「心臓血管系疾患」です。1年間に約34万人が心筋梗塞や脳卒中なのでこの世を去っていました [厚生労働省資料] 。
この心臓血管系疾患にかかるリスクを減らすには「適度な運動」や「健康な食事」が大切——、でもこのような説明は耳にタコができるくらい聞かされているでしょう。今回はちょっと意外な習慣で心臓血管系疾患を減らせるかもというお話です。
鍵となる習慣は「歯磨き」。夜磨くとリスクが4割低下。
その習慣とは「眠る前の歯磨き」。大阪大学の研究グループが6月28日、「サイエンティフィック・レポーツ」で報告しました。あの「ネイチャー」と同じ会社から発行されている学術誌です。簡単にご紹介しましょう [文末文献1] 。
研究グループが解析対象にしたのは、20歳以上の1,675人。全員、何らかの理由で入院しにきた人たちです。入院した時の聞き取り検査の結果から、「(26%)、「晩だけ歯磨き」(47%)、「朝だけ歯磨き」(11%)、「歯磨き習慣なし」(いるんですね、こういう方も・・・・、16%)の4群に分け、その後およそ450日間に、心臓血管系疾患を発症するリスクを比べました。
その結果、「歯磨き習慣なし」に比べ心臓血管系疾患リスクが減っていたのは、「朝晩歯磨き」と「晩だけ歯磨き」だけでした。どちらも「歯磨き習慣なし」に比べ、相対的に40%以上、リスクは低下していました。一方、「朝だけ歯磨き」だと心臓血管系疾患リスクは「歯磨き習慣なし」と差を認めませんでした。
この結果は、「歯磨き」以外の要因(年齢や合併症など)が心血管系疾患発症に与える影響を統計学を用いて除去した(補正)した結果です。なので「歯磨き」そのものの影響が出ていると研究グループは考えてるようです。
腸内環境への悪影響を回避?それとも歯周病菌が血中に入って悪さするのを阻止?
ではなぜ、歯磨きのタイミングで心血管系疾患のリスクが異なるのでしょう?研究グループは3つの可能性を提示しています。1)夜に歯を磨かないと口腔衛生が損なわれ咀嚼機能が落ちて健康が損なわれる(きちんとした食事が取りづらくなるということでしょうね)、2)口腔内の細菌が腸内細菌に悪さをして、全身性の健康が損なわれる(その結果、心臓血管系疾患になりやすくなる)、3)歯茎から血液内に侵入した歯周病菌が心臓血管系疾患を引き起こす——というものです。
眠る前に歯を磨かないと腸内細菌叢に悪影響があるとすれば、悪影響は心臓血管系疾患に限られないかもしれません。
もっとも厳密にはこの研究からは歯磨きのタイミングが直接、心臓血管系疾患のリスクに影響を与えているかは不明です。眠る前に歯磨きする人たちに共通した「何か」が心臓血管系疾患リスクを抑えている可能性も否定できません。
でも夜眠る前に歯を磨いても損はないでしょう。「就寝前歯磨きで心臓血管系疾患が減る」に賭けてみてみるのも一興です。
いかがでしたか?眠る前に歯を磨かないと、日本人で2番目に大きな死因である「心臓血管系疾患」を引き起こしやすい可能性があるというお話でした。
歯磨きについては、「『しっかり歯磨き』で血圧低下?降圧薬を飲み始める前にぜひ一読を!」という論文紹介記事も書いています。こちらもぜひ、ご覧ください。ではまた!
今回ご紹介した文献
就寝前に歯磨きしないと心臓血管系疾患のリスクが増える [英語・全文無料]。
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【注意】本記事は最新の医学論文についての紹介あり、研究結果の内容はあくまでも「論文筆者」によるものです。また論文の解釈は論者により異なる可能性もあります。あくまでもご自身の見解形成の参考としてお読みください。