WBCと五輪、侍ジャパンはどっちもプロじゃなきゃいけないのか?上原浩治の提言
2026年3月に開催される次のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の1次リーグの組み合わせが主催者から発表され、日本は韓国、オーストラリア、チェコ、予選通過チームとC組に入った。23年大会の1次リーグで各組4位以内に入った16チームと、25年に行う予選を勝ち抜いた4チームの計20チームで争われる。この大会の2年後には、野球・ソフトボールが実施されるロサンゼルス五輪が控える。ロス五輪については、メジャーリーグが選手を派遣するかが注目されているが、日本球界も含めて「WBCはプロ、五輪はアマチュア」と、派遣の線引きをしてもいいのではないだろうか。
2006年にWBCの第1回大会が開催され、26年大会は6回目を数える。私も参加した第1回大会は、大会そのものの認知度もまだ高くなく、出場している選手ですら、WBCがどういう大会なのかをはっきりとはわかっていなかった。しかし、第1回大会で、日本と米国の試合で“誤審疑惑”の判定をきっかけに日本国内での注目度が急上昇。さらに、09年の第2回大会では、第1回大会に続いてイチローさんがチームを牽引し、松坂大輔氏らメジャー組と、当時の日本球界でエース級だったダルビッシュ有選手らも出場して盛り上がりを見せた。昨春の第5回大会で、大谷翔平選手が日本代表「侍ジャパン」を優勝に導いた活躍は記憶に新しい。
本場のアメリカでは、春はメジャーのオープン戦の時期と重なり、主力クラスが出場を見送っていたこともあり、大会そのものも浸透していなかったが、徐々に選手らの関心も高まってきた。第5回大会では、レギュラークラスが各国・地域の代表に顔をそろえるようになってきている。サッカーのワールドカップなどと比べれば、まだ歴史も浅いが、MLB(メジャーリーグ機構)とMLB選手会が主催組織を設立していることもあり、メジャーの選手派遣は今後も積極的に展開されていくだろう。
一方、五輪については、これまでメジャーが派遣を認めたケースはなく、米国代表などもプロ選手の派遣が解禁されてからも、マイナーリーグの選手らで構成されていた。五輪の時期にも、メジャーリーグはレギュラーシーズンを中断することはなく、メジャーと五輪の野球は「別物」という扱いだった。ロサンゼルス五輪も、メジャーのロブ・マンフレッドコミッショナーが選手の派遣に含みを持たせているが、最終的な結論は不透明だ。
私自身は、メジャーも日本のプロもWBC一本に絞って派遣をすればいいと思う。
五輪は野球以外の競技も行われ、野球だけが主役の大会ではない。2000年シドニー五輪からプロ選手が派遣されるようになり、日本は04年アテネ五輪から原則的に「オールプロ」でチームを編成するようになった。私自身も代表に選ばれたアテネ五輪では「アマチュアの人たちの活躍の場を奪ってしまった」という申し訳ない気持ちだったのが正直な心境だ。
アマチュア球界には、けがの不安があったり、体格的な課題もあったりして、プロのドラフトにはかからないが、素晴らしいプレーができる選手たちがいる。彼らは社会人野球などを主戦場としているが、こうした人たちの目標の場として、五輪の舞台があっていいと思う。韓国や台湾、キューバなどはそれぞれの国が決定をすればいいのかもしれないが、野球大国の日本とアメリカが、プロのトップ選手は「WBC」、アマチュアは「五輪」という区分けを先導していくことは悪くない。
例えば、ドジャースの大谷翔平選手が五輪で活躍する姿を見たいと思うファンもいるかもしれない。しかし、大谷選手の真剣勝負は日々のレギュラーシーズンであり、大谷選手が目標に掲げるワールドシリーズ制覇への道のりにある。日の丸を背負って戦う場もWBCがある。大谷選手だけではなく、メジャーの選手が国際舞台でプレーするときには、けがのリスクとも向き合わなければならない点も忘れてはいけない。
メジャーやプロが参加しなければ、五輪で野球・ソフトボールが実施される可能性が低くなるとの指摘もあるだろう。しかし、競技上の特性も影響している。野球文化がない国の都市で開催するにはスタジアムというハコを新たに作る必要があるからだ。だからこそ、五輪で追加種目になるのは、東京やロサンゼルスのように、既存のスタジアムがある都市に限られている。
WBCでは、日本代表が第5回大会で対戦したチェコのように、普及が途上の国・地域も出場している。彼らの活躍によって、野球未開の地に、スタジアムが整備されていくようになれば、ゆくゆくは五輪での開催機会が増える可能性もある。
五輪もWBCもプロの派遣でいいのか。皆さんはどう考えますか。