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親から子に伝えたい ゲリラ豪雨から身を守る4つのポイント

饒村曜気象予報士
紙飛行機を飛ばす子供達(写真:アフロ)

ほぼ全国的に梅雨明けとなり、夏休みにはいった子供達は、屋外で過ごす時間が多い季節となりました。

しかし、毎年のように「まさか!」と思う場所で、局地的な短時間の大雨(ゲリラ豪雨)などの自然現象で亡くなる人がいます。

地球温暖化の影響かどうかは、長期間の観測データがないのでわかりませんが、事実として、最近は記録的な短時間の大雨が増加しています。

気象庁が「猛烈な雨」と表現している1時間に80ミリ以上の雨の発生回数は、20 〜30年前に比べ、最近の10年間は8割増しです(図1)。

図1  アメダス1000地点あたりの「猛烈な雨(1時間80 mm 以上の雨)」の発生回数
図1  アメダス1000地点あたりの「猛烈な雨(1時間80 mm 以上の雨)」の発生回数

そこで、子供たちが安全で楽しく夏をすごすために、親から子供に伝えたい4つのポイントをまとめてみました。

1 自分の身は自分で守る

ゲリラ豪雨に限りませんが、自然災害が起きた時、身近なところが危険な場所に変わります。日本の防災体制はしっかりしており、必ず助けはきますが、すぐにとはゆきません。

発生直後、しばらくは自分の身は自分で守るしかないのです。

だれかが助けてくれるだろうとか、誰かを頼るとかではなく、「自分の身は自分が守る」という意識を持つことで、次の3つのポイントが生かせます。

2 ゲリラ豪雨も予測できているので気象情報に注目する

ゲリラ豪雨というと神出鬼没で、予測できない印象がありますが、おおよその場所とおおよその時間なら予測できています。

大気が不安定で局地的大雨の可能性があるときには、予め気象情報などが発表されます。天気予報でも「所により雷雨」などということがあります。

短時間予報も充実し、数時間先までのきめ細かい雨量予測が提供されています。

近くでゲリラ豪雨が発生していることを、ツイッターで知ることができる時代になっています。また、スマートフォンのアプリで、登録をしておくと、自動的に近くの大雨情報を入手することができる時代になっています。

「ゲリラ豪雨も予測できている」という認識で、外にでるときには、必ず気象情報を確認し、

「雷を伴う」「大気の状態が不安定」「竜巻などの激しい突風」という言葉が出てきたら、注目しながら外にでる習慣をつけることが大事です(図2)。

図2 気象情報の利用(気象庁のパンフレットより)
図2 気象情報の利用(気象庁のパンフレットより)

3 積乱雲に気をつける

ゲリラ豪雨は、発達した積乱雲が組織的に重なるように発生しておきます。

発達した積乱雲は、竜巻などの突風や落雷などもをも引き起こしますので、屋外にいるときは、発達した積乱雲の発見です(図3)。

図3 積乱雲ってどんな雲(気象庁ハームページより)
図3 積乱雲ってどんな雲(気象庁ハームページより)

真っ黒い雲が近ずいてきたり、雷鳴が聞こえた、急に冷たい空気が吹いてきたときは、積乱雲が近づいてきた印です。

外にいるとき、常に積乱雲に気をつけるのは大変ですが、気象情報に注目しながら外にでる習慣がついていると、その習慣がないときより早く空の異変に気がつきます。

4 すぐに危険な場所から丈夫な建物に避難する

人には、「たぶん大丈夫」「自分は大丈夫」と自分に都合良く考えてしまう傾向があります(「正常化の偏見」といいます)が、積乱雲が近づく兆しを感じたら、すぐに危険な場所から離れることが大事です。

丈夫な建物などに避難し、しばらくは丈夫な建物の中で身を守るのが大事です。

激しい雨の中を歩くのは危険です。雨宿りが必要です。

川はあっという間に水かさが増し、川の流れが激しくなります。川のそばから離れます。

大きな木に落雷し、誘導雷に感電することがあります。大きな木から離れます。

突風で物は飛んできます。防ぐには建物の中に入るです。

ゲリラ豪雨の変遷

ゲリラ豪雨の語源は、昭和40年代のベトナム戦争で行われていたゲリラ戦です。

アメリカが本格的に支援した南ベトナム軍に対して、南ベトナム解放民族戦線と北ベトナム軍が行った、攻撃する敵をあらかじめ定めずに小規模部隊での奇襲や待ち伏せ攻撃という戦略がゲリラ戦です。

昭和44年(1969年)の夏は、東北から北陸・信越など、各地で局地的豪雨が発生しました。この豪雨が予想も現状把握も難しいことから、ベトナム戦争のゲリラ戦になぞらえて、新聞などでゲリラ豪雨という言葉が頻繁に使われました。

当時は、気象衛星「ひまわり」もアメダスもなく、狼(局地的豪雨)がいるかどうかさえわからず、いつ襲ってくるかは全くわからなかったからです。

しかし、昭和50年4月にベトナム戦争が終わり、その後、気象衛星「ひまわり」やアメダスによって局地的豪雨の監視や予測が行われ、狼が近くに来ていることはわかる時代になり、ゲリラ豪雨という言葉が次第に使われなくなりました。

平成20年の夏に記録的な局地的豪雨が各地で相次ぐと、再びゲリラ豪雨という言葉が使われだします。

気象衛星「ひまわり」やアメダスの活躍により、現在では現状を素早く正確に把握でき、

数値予報技術の進歩により発生地域や時間帯についての予報が可能となってきたといっても、私たちの生活が変化し、雨の予報でも、領域を絞り込み、いつ、どの程度の雨が降るかを具体的に予想することが求められるようになってきたからです。

狼がいることは分かっただけではダメで、その狼が、いつのタイミングで、どの程度の集団で襲ってくるかが求められる時代となったのです。

子供たちに多くのことを言っても、記憶に残らないのでは意味がありません。すくなくとも、4つのことを伝えてみてはどうでしょうか。

自分の身は自分で守る

ゲリラ豪雨も予測できているので気象情報に注目する

積乱雲に気をつける

すぐに危険な場所から丈夫な建物に避難する

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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