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元WBOラテンアメリカ王者が終身刑に

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
(写真:ロイター/アフロ)

 WBOラテンアメリカ・ライト級王座を6度防衛し、日本の中谷正義と戦ったこともある(中谷の9回KO勝ち)プエルトリカン、フェリックス・ベルデホが、2つの終身刑を受けた。

 妊娠中だった27歳の恋人ーーケイシュラ・ロドリゲスを惨殺し、かつ、胎児死亡致死罪に問われた裁判で、2件共に有罪とされた。2021年4月に殺害されたロドリゲスの遺族による感情的な証言が、連邦裁判官の胸に刺さったようである。

写真:ロイター/アフロ

 ベルデホ被告の弁護士は金曜日、判決に対して控訴する予定であると述べているが、2つの命を奪った罪は重い。

 今年初めの公判中、ベルデホの友人で、同じく同件で起訴されたルイス・アントニオ・カディスは、ベルデホがロドリゲスに中絶するよう圧力をかけたと述べた。また、ベルデホがロドリゲスを殺害した日、このプエルトリカン・ボクサーは、彼女を殴り、有毒物質を注射した後、手足をセメントブロックに縛り付け、白昼、混雑した橋から海に投げ込んだことを証言した。

 その後、カディスは匿名で警察に通報し、ロドリゲスの遺体の場所を提供したとされる。

写真:ロイター/アフロ

 検視の結果、ロドリゲスの体内にはフェンタニルと馬などの動物に使用される鎮静剤キシラジンが含まれていたことが判明。同殺人事件は、家庭内暴力被害者に対するより良い保護を求めてきたアメリカ社会に衝撃を与えた。

 ベルデホは2012年のオリンピックに出場し、プロに転向。27勝 (15KO) 2敗と、ボブ・アラムに期待されていたが……。

 控訴したところで、状況が変わる筈もない。1993年5月19日生まれの30歳は、残りの人生を塀のなかで暮らすことになりそうだ。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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