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「終わった男」ライアン・ガルシアが年末、格闘技興行に来日

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
(写真:ロイター/アフロ)

 元WBC暫定ライト級チャンピオンのライアン・ガルシアが12月30日に、日本キックボクシング界の有名選手、アンポルキヤと特別エキシビションで対決するそうだ。米国のボクシングメディアにプレスリリースが配布された。現地時間、11月19日のことである。

 そこには、「7月のエキシビションマッチで、ボクシング界のレジェンド、マニー・パッキャオに対してセンセーショナルなパフォーマンスを見せ、大舞台で存在感を示したキックボクシングチャンピオン、アンポと対戦する。ガルシアにとって、キャリア史上最大かつ最強の相手だ」と記されている。

 筆者はこのリリースによって初めてアンポルキヤなる人物の名を知ったが、ガルシアにとっては7回KOで眠らされたジャーボンテイ・デービス以上の強敵らしい。同エキシビションは、153パウンドで行われ、2分×8ラウンド、ボクシングルールで行われるという。

写真:REX/アフロ

 ガルシアは今年4月20日のデヴィン・ヘイニー戦で、禁止薬物であるオスタリンを使用し、1年間の出場停止処分を受けた。そのヘイニー戦ではリミットをオーバーしてリングに上がり、相手より重い体を武器とした。実は、ヘイニーとのファイトが決まった頃から、UFC王者との対戦に意欲を見せていた。

 2月26日、ガルシアは「The MMA Hour」に出演し「UFC王者であるショーン・オマリー戦とボクシングルールで戦いたい。既にデイナ・ホワイト会長にテキストメッセージを送った。彼の周囲にいる人たちにも、お願いしてもらっている。デヴィン・ヘイニー戦後に実現させたい」と発言。

 アンポ戦は、願ったり叶ったりか。

Esther Lin/SHOWTIME
Esther Lin/SHOWTIME

 3月に入ってからのガルシアは、「ラップシングルをリリースするとアナウンス」「デヴィン・ヘイニーの父親で、トレーナーを務めるビルに、プロのポン引きとしての仕事を与えようとした」「ボヘミアン・グローブの森に誘拐されたと主張した」「2歳の時にレイプされ、証拠があることを明かした」「インフルエンサーのジェイク・ポールにも対戦を要求」「ジェイクの兄、ローガン・ポールを悪魔崇拝者だと非難し、消費者に彼のプライム・スポーツドリンクをボイコットするよう促した」「2人の異なる女性に疑似結婚の申し込んだ」「6月6日にラスベガスとロサンゼルスを大地震が襲うと予測した」「宇宙人が存在するという証拠を持っていると発表した」「著名人のオペラ・ウィンフリー、トム・ハンクス、マーク・ザッカーバーグがジェフリー・エプスタインのリストに載っており、イーロン・マスクが『反キリスト』であるという証拠を持っていると主張した」などなど、相次ぐ奇行で、その精神の異常性が指摘されている。

Esther Lin/SHOWTIME
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 ボクシングのライセンス停止中に、カネを稼げる道を発見したのか。これまた、異様な言動のひとつなのか。いずれにしても、ガルシアのメンタルに問題があることは間違いなさそうだ。ヘイニー戦の前の時点で、ニューヨーク州アスレチックコミッションもガルシアに検査を受けるべきだと主張していた。もはやガルシアは「終わった男」なのである。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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