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【年度内六冠ロード】藤井聡太二冠(19)棋王戦ベスト16進出をかけての斎藤明日斗四段戦(23)始まる

松本博文将棋ライター

 9月2日10時。東京・将棋会館において第47期棋王戦挑戦者決定トーナメント(本戦)2回戦▲藤井聡太二冠(19歳)-△斎藤明日斗四段(23歳)戦が始まりました。

 今日の将棋会館5階、特別対局室では2局が並んでおこなわれます。最上席の窓側に配置されているのが本局です。

 特対の入口側は森内俊之九段-糸谷哲郎八段戦。そちらは3回戦、ベスト8入りをかけての対局となります。森内九段は2005年度に棋王位を1期獲得。今期は予選からここまで勝ち上がっています。一方の糸谷八段は前期棋王戦挑戦者です。

 今期は渡辺明棋王の10連覇もかかっています。挑戦者として名乗りをあげるのは誰でしょうか。

 9時44分頃、斎藤四段が入室。窓側の下座に就きます。黒い鞄の中からペットボトルの水、お茶、除菌シート、紙コップなどを取り出してお盆の上に置き、扇子は座布団の前に置きました。

 続いて9時48分頃、藤井二冠が姿を見せ、床の間を背にして、上座にすわります。黒いリュックからハンカチ、デジタル時計、扇子などを取り出し、除菌シートでお盆を念入りに拭きました。そしてペットボトルから紙コップにお茶を注いで、一口飲みました。

 両対局者が駒を並べ終えたあと、記録係が藤井二冠側の歩を5枚取って振り駒をします。畳の上には表の「歩」が3枚、裏の「と」が2枚。藤井二冠の先手と決まりました。

 隣りの森内-糸谷戦も「歩」が3枚。

「振り駒は『歩』の方がわずかに多く出るのではないか?」

 という説もかつては聞かれました。そこで将棋連盟が一時期統計を取っていたことがありましたが、やっぱりほぼ同じという結論になったようです。

「それでは時間になりましたので、藤井先生の先手番でお願いします」

「それでは時間になりましたので、森内先生の先手番でお願いします」

 2人の記録係の声が響き合って、午前10時、持ち時間4時間の対局が始まりました。

 藤井二冠は紙コップに注がれたお茶を口にしたあと、初手、飛車先の歩を突きました。

 進んで戦型は相掛かりに進みました。3日前の8月30日におこなわれた竜王戦挑戦者決定三番勝負第2局▲藤井二冠-△永瀬拓矢王座戦も相掛かりでした。

 23手目。藤井二冠は端9筋に角を上がります。この戦型では比較的珍しい手段で、早くも揺さぶりをかけた格好です。

 ▲森内-△糸谷戦は糸谷八段が趣向をこらし、早くも定跡形からはずれた進行です。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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