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渡辺明九段(40)将棋日本シリーズ4回目の優勝! 決勝で広瀬章人九段(37)に快勝

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 11月25日。東京都江東区・東京ビッグサイトにおいて、第45回将棋日本シリーズ・JTプロ公式戦の決勝▲広瀬章人九段(37歳)-△渡辺明九段(40歳)戦がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。


 16時47分に始まった対局は18時9分に終局。結果は106手で渡辺九段の勝ちとなりました。


 渡辺九段はこれで本棋戦4回目の優勝を飾りました。


 優勝回数4回は、谷川浩司17世名人の6回、羽生善治九段の5回に次ぐ記録です。

 2019年の決勝カードの再現となった本局。広瀬九段はリベンジならず、2回目の準優勝となりました。

渡辺九段、快勝でV4


 広瀬九段先手で対局開始。渡辺九段は、現代でいう雁木(4三銀型)の陣形に組みます。角交換のあとの38手目、渡辺九段は右玉に構えました。ここで本棋戦恒例である次の一手クイズ出題のため、封じ手となります。

 39手目。広瀬九段の封じ手は、じっと自陣の歩を突いて陣形を整える、落ち着いた一手でした。以後は互いに間合いをはかりあう進行に。後手の渡辺九段としては、千日手でもかまわないという姿勢です。

渡辺「途中から手詰まり模様になって、難しかったんですけど。後手番なんで、ある程度ちょっとやってもらう感じで。途中、封じ手再開後あたりは難しくて。そのあとはちょっと、いろいろな手がある将棋だったかなと思います」

 59手目。広瀬九段は自陣に角を打ち据えて動き、ようやく本格的な戦いが始まりました。

 81手目。渡辺九段は飛車取りに金を立ちます。これが好手。広瀬九段にあえて飛車を成らせる代わりに、金を中段の要所に進めて角を圧迫し、局面をリードしていきました。

 広瀬「序中盤がちょっと雑で、先手番としては大失敗で。中盤はいろいろあったかなと思うんですけど。ちょっとやっぱり苦労してる展開を強いられてしまって。あまりチャンスがなかったような将棋で。ちょっと残念だったかなと思います」

 渡辺九段は広瀬玉を中段へと引っ張り出し、94手目、自陣から王手で角を打ちます。これが攻防によく利く決め手となりました。

 最後は渡辺九段が広瀬玉を詰ませて、104手で終局。両対局者が深く一礼すると、現地で熱戦で見守っていたファンから、大きな拍手が起こりました。


 渡辺九段は今年度前半、王位戦七番勝負で藤井聡太王位(七冠)に挑戦。そちらでは1勝4敗で敗退となりました。一方で後半に入って、JT杯優勝という大きな栄冠を手にしています。

 決勝では惜しくも敗れた広瀬九段。Xではやや自虐気味?のポストがありました。

 しかし広瀬九段は準決勝で藤井JT杯覇者に勝って3連覇を阻止するなど、トップクラスの棋士として、十分に存在感を示しました。この先の活躍にも期待です。

 本局終了時点で、広瀬九段は岡部怜央四段と並んで、今年度の対局数ランキングで1位となっています。


将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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