文在寅大統領への「誕生日お祝い広告」は是か非か…支持者たちが自腹を切って各地に掲載
総理大臣や大統領の誕生日というものは、よっぽどでない限り気づかないまま過ぎるものだろう。しかし、本日1月24日に65歳の誕生日を迎える文在寅(ムン・ジェイン)大統領に限っては、そうもいかなさそうだ。
最近、ソウル市内を走るいくつかの地下鉄駅構内では、「1953年1月24日、韓国に月が出た日」というコピーと文在寅大統領の大型写真をよく見かけるようになったという。いわゆる「誕生日祝い広告」の文在寅大統領版が登場したのだ。
名字がムン(MOON)であることから、支持者の間ではよく月(MOON)に例えられる文在寅大統領だが、誕生日を“月が出た”と表現したところにはさすがに支持者たちの愛情を感じざるを得ない。
文在寅大統領がアメリカの『タイム』誌の表紙を飾ったときも大フィーバーだったが、今回もそれに近い愛着を思わせる。
(参考記事:文在寅大統領が表紙を飾った米国「タイム誌」がバカ売れ中!! その表紙に隠された秘密とは?)
そもそも誕生日祝い広告は、主に芸能人(特にアイドル)の誕生日を祝うためにファンが自発的に行なうイベントである。韓国の芸能人ファンたちの間では今やひとつの文化として定着しており、そういった広告を駅で見かけるのも珍しくなくなってきた。
韓国の広告代理店担当者や企業のマーケティング担当者たちは、そうした「誕生日祝い広告」を人気のバロメーターとして参考にし、キャスティングに役立てている場合もあるほどだ。
(参考記事:韓国企業マーケティング担当者が選ぶ“広告モデルにしたい美女”TOP5)
しかも最近は、国内だけでなく海外で広告を展開する場合もある。昨年の6月と12月にはTWICEのツウィとWanna Oneカン・ダニエルの誕生日を祝う動画広告が、それぞれニューヨークのタイムズスクエアで流れたことが代表的なケースと言えるだろう。
このタイムズスクエアにも、文在寅大統領の誕生日を祝う広告が掲載されたらしく、多数のメディアが今回の文在寅大統領の誕生日祝い広告を取り上げている。
アメリカでは、「韓国大統領がまるでK-POPアイドルのような扱いを受けている」(『QUARTZ』)と報じられたという。現大統領の誕生日祝い広告が出されたのは韓国史上初の出来事だけに、メディアが騒ぐのも当然だろう。
では、文在寅大統領の誕生日祝い広告は誰が企画し、いくらの広告出稿料がかかっているのだろうか。
『東亜日報』などによると、今回の広告は文在寅大統領の支持者たち、特に女性支持者たちが中心となったもので、動画と写真を合わせて1360万ウォン(約136万円)ほどの費用が発生しているという。
掲載期間やスポット、駅の知名度などによって金額は異なるが、例えば大型カラー写真広告1件をソウルの1カ所の駅で1カ月間掲載する場合、およそ170万ウォン(17万円)がかかると言われていることを考えると、9〜10カ所には掲載されていたと考えても良いもかもしれない。
一般人にとって決して安い金額ではないと思うが、もともと“イニグッズ”と呼ばれる大統領関連アイテムが出回るほどの人気者。支持者たちが自発的にお金を集めて前例のない「大統領の誕生日お祝い広告」を行なうのも、種のイベントめいた要素もあるのだろう。
ただ、当然というべきか、韓国では賛否両論がある。
自由韓国党や正しい政党など、野党に所属する議員たちが「公共機関の政治的中立性に損傷 憂いのある広告は設置を制限する」という韓国交通公社の広告物審議規定を根拠に、広告の撤去を主張している状況だ。
文在寅大統領の支持層が多いとされるネット空間でも、「ちょっとやりすぎではないか」「人に迷惑がかかることではない」といった意見が飛び交っている。
そこには、文在寅大統領らが中心となって推し進められている平昌五輪の女子アイスホッケー南北合同チーム結成などへの反発も働いているのかもしれない。
誕生日祝い広告は、ファンの所属感や一体感を感じ、当事者とファンの絆を深めるきっかけになるし、広告市場を活性化させるという側面もある。一方で、そのお金をもっと社会的にも有意義なところに使えないのかという老婆心が過るのも事実だ。
熱狂的な支持者たちの愛情表現とはいえ、国家元首の誕生日を盛大に祝うのはどこぞの国の指導者たちとさほど変わらず、いささか滑稽にも映るが……。