夢打ち砕かれた“ジュノン・ボーイ”黒羽麻璃央、人気俳優たちと…野球でCDデビュー!?
“ジュノン・ボーイ”として芸能界入りした、黒羽麻璃央(くろば・まりお)さん。“仮面ライダー”や“月9”に出演して大スターになって…と思い描いていた夢は、かなうことなく、見事に打ち砕かれました。何度もこの世界をやめようと思ったと言いますが、今や舞台俳優として人気を得るまでに。そんな彼の強い思いに誘われた俳優たちが集まり、このたび野球でCDデビューすることに!モットーは“腹八分目”。とにかく、野球愛が止まりません。
—芸能界入りのきっかけとなった「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」。応募した理由は?
あの頃は、打ち込んでいた野球をケガでやめてしまって、バイト・遊び・軽音楽の毎日で…。ちょうど僕が応募する前の年に、地元の宮城県に、同い年で“ジュノン・ボーイ”になった人がいたんです。それと、同じ学校に、街でスカウトされて芸能活動をしている人がいたんです。周りからも「麻璃央もイケるでしょう」と言われて、半分ノリで応募しました。
—見事“準グランプリ”に選ばれるわけですが、事務所に入ってからは順調でしたか?
全然、順調じゃなかったです。ナメていました。事務所に入ったのは高2だったんですが、当初は「皆より1年早く就活終わった」くらいの感覚でした。街に出たら歩けないくらいの人間になる…とも思っていたくらいで(笑)。
最初は、“ジュノン・ボーイ”という肩書もあったし、「仮面ライダー」になって、“月9”に出て、学園ドラマをやって…と自分なりの未来計画があったんですけど、死ぬほどオーディションに落ちました。「仮面ライダー」は何回受けても受からない、“戦隊モノ”も落ちまくり。いいところまでは行ったりするんですけど、全然ダメでした。
“ジュノン・ボーイ”といえば、王道を行けるものだ、周りがそうしてくれるものだ、と甘くみていたんです。現実に目を向けると、“準グランプリ”は毎年出てくるし、他からもイケメンはどんどん出てくる。何度もやめようと思ったし、実際、やめるという話までしました。
—何故、頑張れたんですか?
負けず嫌いなところがあるのかもしれない。というか、メンタルは弱いんです(笑)。すぐに「もうだめだ、嫌だ、地元に帰りたい」という感じになりますから。それを自分でも分かっているので、負けず嫌いな人間を演じようとしていたのかもしれないですね。
—どういう時にそうなりますか。
怒られたらそうなります。“ザ・ゆとり”なので(笑)。でも、それではダメだということも分かっているから、必死で負けず嫌いを演じようとしていたんです。
例えば、嫌なことがあると「よし、あいつをギャフンと言わせてやるぞ」という気持ちを作って、這い上がっていく演技をして乗り切るんです。イメージは“元ヤン”です。昔、ちょっとやんちゃしていた人が魂で食らいついていく…みたいな。あっ、僕は元ヤンじゃないですよ。フルーツジュース店や遊園地でアルバイトしている青年でした(笑)。
—芸能界が楽しくなってきたのは、いつぐらいですか?
ここ5年くらいで、お芝居することの楽しさが少しずつ芽生えてきて、これ以外の仕事はできないかもしれない、と思うようになりました。
舞台が終わって拍手を聞いた時の「もう演じなくていいんだ」という解放感。フェイクとはいえ、例えば人を殺(あや)める話なら、その感覚があって、精神状態をそこまで持っていくのが苦しい。しんどければしんどいほど、終わった時の解放感が大きいんです。
—そんな中、黒羽さんによる企画で今夏、舞台俳優37名を集めて「ACTORS☆LEAGUE 2021」と題した野球大会を開催しましたね。企画の延長で、CDデビューもするとか。
自分の好きなこと、「野球をやりたい!」という思いは止められませんでした。「ACTORS☆LEAGUE」については、6~7年くらい前から「なぜ俳優の野球大会がないんだろう?」と疑問に思っていたんです。そんな時、「何かやりたいことないですか?」と聞かれて。その方は多分、やりたい舞台や作品を聞きたかったんだと思うんですけど、思わず「野球がしたいです。野球大会やりましょう!」と言ったら、意外と「いいね」となりまして。
ちなみに僕は、小学4年生から中学3年生まで野球をしていました。初めて自分の意思で選択して始めたことです。その頃アイドルにも興味があったので、某アイドル事務所に応募しようと思っていたんですが、親から「野球かアイドルのどちらかを選べ」と言われて、野球を選んだんです。
今回も最初は、純粋に「プライベートで野球をしたい」というところから始まりました。とはいえ、舞台俳優はケガも心配だし、稽古や本番で忙しい。どうしたら野球ができるか…と考えたら、仕事にするのが一番早い!という結論に至って。そうすれば、皆のスケジュールを取れるし、お客さんも来てくれるのでは、と思ったんです。
最初は地方球場を考えていたのですが、いつの間にか話が大きくなって、夏には東京ドームで有観客で配信もすることになりました。コロナ禍で世の中の空気が落ちている時でもあったので、希望が持てる、前へ進む一歩を踏み出せるようなモノを作ろう、となったんです。
野球好きの舞台俳優を探して、得意なポジションや野球歴をリサーチして、チーム分けして。企画から実現するまで1年かかりませんでした。
—先輩俳優にも声をかけたんですね?
城田優さん、山崎育三郎さん、尾上松也さんのご協力も得て、皆さん「おもしろそう」「やろう」という感じでした。育三郎さんと松也さんは、去年『エリザベート』(コロナ禍で中止)で初めてお会いして、稽古期間に仲良くさせていただいたので、ご連絡しました。城田さんはお会いしたことがなかったんですけど、今回素敵な楽曲まで作っていただきました。
参加者は2.5次元の俳優達が多いんですけど、優さん、育三郎さん、松也さんと一緒にお仕事して、絶対刺激を受けると思うんです。僕自身がそうだったので、皆にも何かを感じるきっかけになってくれたら、という思いがありました。
—普段大切にしている言葉はありますか?
“腹八分目”。一生懸命やることも大切だけど、満腹にならない状態で見えるものもあると思うので、いっぱいいっぱいにならないということです。お腹がいっぱいで何も入らない状態にはしない。まだちょっと隙間があるというか、余白を大事にする、という意味で“腹八分目”。
—憧れの俳優さんはいますか?
リリー・フランキーさん。まさに余白じゃないですか。映画を観ていても“すげぇ”って思います。特別に何かしているように見えないのに、自然と目がいくというか、あのユルい雰囲気が、大好きです。
一度、舞台でご一緒してみたいと思うのは大竹しのぶさんです。役者さんとして圧倒的なものをお持ちで。プライベートのほわほわした感じとのギャップがすごいなと。プライベートは実際には知らないですけど、テレビの印象で(笑)…お芝居している瞬間は、明確に自分とは違う人格があるのがすごすぎます。
—お二人とお会いしたことは?
ないです。リリー・フランキーさんは3~4回お見かけしたことがあります。羽田空港の待合室で目の前に座っていたり、家具店で買い物している姿を見たり、街中でよく見かけます。見ているだけです。
—何かやりたい仕事はありますか?
同い年の人たちと何かやりたいです。平成5年生まれなんですけど、“5年会”みたいなものを作りたいです。
実は“今年28歳”という俳優は舞台にも映像にもたくさんいます。同級生は、本当に刺激になるんです。だから、同級生がやる演劇を作りたくて…、出演者は平成5年生まれの役者のみ。願わくは、スタッフさんも同い年で、大劇場ではなくて、小劇場で泥臭くやりたいです。お客さんも、同い年ならチケット半額。「頑張ろうぜ、同級生!」ということです。
【インタビュー後記】
“アイデアマン”という印象を受けました。やりたいことが次々と出てくるし、誰かと競い合うというよりは、一緒に高め合い、仲間を引き上げようとする気持ちが伝わってきました。自分が得た感動と成長を人にも分け与えてくれる、度量の深さがあります。平成5年生まれは、芸能界では黄金世代と呼ばれる豊作の年。魅力的な俳優さんがたくさんいるので、本当に“5年会”ができたら一大勢力になりそうです。
■黒羽麻璃央(くろば・まりお)
1993年7月6日生まれ、宮城県出身。「第23回JUNON SUPERBOY CONTEST」準グランプリ。2019年に「第9期みやぎ絆大使」に任命され、東北楽天ゴールデンイーグルス始球式を務めた。ミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズン、『刀剣乱舞』などで人気を博す。『ロミオ&ジュリエット』ロミオ役など舞台をはじめ、テレビ・映画にも多数出演。2021年7月、東京ドームで『ACTORS☆LEAGUE』を開催。CD『ACTORS☆LEAGUE 2021』は12月15日、ポニーキャニオンから発売。